スマホなしでは暮らせない中国:オンライン(ネット)販売はトライアル獲得が目的


 国でのオンライン販売(ネット販売)は現在非常に活気に満ち溢れている。中国の事情についてよくわからない会社は、日本で成功してから中国に進出と考えているかもしれません。

 しかしながら、そういう悠長なことは言っていられない状況になりつつあるし、日本の成功パターンは中国で通用しない可能性がある。市場の歴史と特長を見ていけば明らかである。

 また、オンラインは、価格の優位性がなければ売れないかもしれないと思っている人も多いでしょう。市場背景を紐解けば、その2つの理由が明らかになる。


1. 中国のオンライン販売発展している背景

(1) オフライン(リアル店舗)とオンラインの発展の歴史の違い


 日本では、オフラインの小売業の初めは三越の1904年で、オンライン登場したのが2000年代前半になる。よって、商品を提供するメーカーはオンライン主体に売上を組み立てる傾向にあった。

 一方中国では、1978年からの開放政策以降、1991年に聯華超市が設立され、1997年頃にカルフール、オーシャン等外資の小売店が相次いで参入。オンライン販売は、タオパオは2003年に参入なので、オンラインが成熟する前にオンラインが登場したことになる。

 よって、商品を扱うメーカーは、それぞれの市場地位によって、重視するチャネルを決めている(オフライン重視、オンライン重視等)

 それに対し消費者は、わざわざ遠くにあるリアル店舗に行かなくても商品を購入でき、市内の渋滞状況や、有職率の高い中国で、買い物に対して時間のない主婦は、通勤途中で買い物をする事ができる。(荷物は、自宅でなくても、預かってくれるし、携帯で連絡を取り合うことができるので、在宅時の配達を調整することができる)

 カテゴリーによって若干オンラインでの販売比率は異なるが(高い日用品雑貨品のオンライン比率)、確実にオンラインでの販売は上昇傾向にある。

(2) リアル店舗のリスティングフィーやカテゴリーマネジメント


 日本では、小売店に商品を導入する場合は、リスティングフィー(意味はお店での取り扱いのための入場費用、小売店は不動産商売といわれる所以)は必要ないが中国の小売店では徴収される(1SKU、1ブランドなど小売店によって異なる)。

 またカテゴリーマネジメント導入により、実績のないメーカーは、小売店に新規に参入する場合はリスティングフィを支払っても、取り扱いさせてくれない場合が存在した。

 オンライン販売であれば、リスティングフィーの概念はなく、原則誰でも導入できる(現在は一部登録料等の名目はあるが、費用は入場料程ではない)

(3) 発達する中国の電子決済(支払い時に現金を必要としない)


 日本では、クレジットカードがメインの決済手段(一部代引き含む)で、中国は、微信や支付宝等QRコードを使った決済手段が発達している。2008年の北京オリンピック以降、携帯及びネット普及、及び微信や支付宝が、オンライン販売を後押ししている。電子決済比率は、日本17%、中国55%で中国の方が進んでいる。

 また、SNSであるLineユーザーは7300万人で人口比58%に対し、微信は10億人で人口比77%。使用者がそれぞれのSNSでの電子決済の状況を考慮すると、中国の方が、電子決済が発達している。QRコードをスキャンしたり、携帯に送られるパスワードを入力するだけで決済できるので、中国の電子決済は消費者にとって本当に便利である。

電子決済比率
出典:https://messe.nikkei.co.jp/rt/column/globaltrend/133022.html
リテールテックジャパンの連載コラムで使用されている2016年2月10日に開催のザ・ワールドワイドジャパンの戦略説明会発表資料より

Lineユーザー比率:2017年12月Line株式会社決算説明資料((https://gaiax-socialmedialab.jp/post-30833/)、
微信のユーザー数:BBCの記事(2018年3月8日)(http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43312223)

オンラインサイトの登録画面(タオパオ網の場合)―QRコードで登録


 中国人の携帯は身分証明書と携帯番号と紐づけされているため、QRコード登録で個人の信用情報が簡単に登録できる。クレジットカードの番号、自宅住所等入力する日本での煩雑さはない。便利さがオンライン販売の発展に寄与している。





2. 中国のオンラインがトライアル獲得といわれる理由


 日本のアマゾンや、楽天での商品紹介画面を見ると、一部を除き、ほとんどが商品のアイコンや、文字情報である。それは対象の消費者ターゲットがある程度商品を知っているためである。

 一方中国では、メーカーの市場地位によって、販売方法を決めているため、オンラインを中心にするメーカーも存在する。よって商品の紹介画面が非常に多彩である。

 一言で言えば、オンライン販売の宣伝内容はきわめて豊富である。粉ミルクメーカーの一例を紹介したい。(T-mallにおけるFriso 美素佳儿の事例)

(1) メーカーの商品紹介


 ここでは基本情報が書き込まれる。商品のアイコン、価格等、出荷元(この場合は杭州)中国のオンラインサイトはこれだけにとどまらない。



(2) 製品紹介ビデオ

 TVでコマーシャルを流す費用がなければ、オンラインサイトで映像を流すことができる。映像の時間の制約条件はTVと違いない。30秒、60秒等。メーカーが自由に設定できる。この粉ミルクメーカーの場合は、粉ミルクの取り出しからお湯に溶かすまでのプロセスを紹介している。



(3) メーカーの紹介


 品質の信頼性を高めるための訴求ポイントに集中している。

1. オランダの牧場で新鮮な牛乳を搾る
2. 雑菌が増えないために4℃での輸送
3. 牛乳から缶詰までの一貫生産管理
4. 栄養成分を科学的に解説
5. 子供が飲むと栄養分を吸収できる等



(4) 製品特長のまとめ




(5) メーカーの品質の信頼性を高めるための物流、倉庫管理の解説




(6)オンライン会社に対する授権書、及び輸入する現地法人の許可証の提示




 以上のように、日本のような文字情報だけではなく、映像、写真、ビデオをふんだんに使い、消費者に対して商品の理解を促進工夫がされている。また、商品特長の訴求のみならず、品質を高める管理体制などの紹介も行っている。

 そして、中国は偽物の商品が多いために、オンライン会社に対する授権書の提示やメーカーの証明書の提示により、消費者に情報を提供している。

 このようにして、中国ではトライアル拡大のために、様々な工夫がなされていることがわかる。こういうオンラインサイトは、もう中国ではPCではなく、スマホで見ている。通勤の途中、仕事帰りなど時間を有効に使っているのが中国人の一般的な生活である。


3. オンライン販売開始にあたる留意点


商品をオンライン会社に登録すれば、販売拡大が可能であるということではない。マーケティングのトータル設計が必要とされる。

(1) 中国に現地法人を設立するか否か:


 日本の商品をそのままオンラインで販売するかどうかを決める必要がある。現地法人設立して、オンラインでの販売主導権が、日本側にあるのか、中国側にあるのか散見される事例を目にするし、越境EC等における価格は非常に安いため、オンライン会社の選択に影響が出るためである。

(2) マーケティングのトータルの設計


 多くのメーカーは知名度がないため、認知拡大のための仕掛けや他のサイトとの連動(微信、口コミサイト、SEO対策など)などを行い、オンラインショップに訪問してもらうための工夫が必要がある。

(3) お客様からの問い合わせ対応、クレーム対応


 これは、商品をオンラインに掲載するだけでは、販売拡大は望めない。消費者に対する対応サービスをしっかりすることにより、メーカーの信頼性を高め、販売拡大を期待できる。

 以上のように、日本とかなり状況が違うことが明らかになった。日本で成功事例を用いて中国のオンラインに参入することを検討しているのであれば、原理原則にのっとり、上記を参考にして、参入を検討して頂ければ幸いです。

 オンライン販売比率が日本では10%台といわれているが、中国ではカテゴリーによっては40%を超えている。プロダクトライフサイクルを考慮すると、確実にマーケティング設計の内容が異なるという意味です。(カテゴリー認知VSブランド認知、特長理解VS差別化、製品機能訴求VSブランド戦略の推進等)

 以上です。(執筆者:廣田 廣達)


廣田 廣達

廣田 廣達

■所属:
・王子ホールディングス(王子製紙グループ)の中国の子会社に出向。中国におけるマーケティングの担当。上海駐在。
■ライフワーク
日中及び日本アジアの違いに着目し、コミュニケーションの改善を通じて、ビジネスの発展に寄与するための講演活動を行う。
・講演実績:三菱総合研究所、日刊工業新聞社、桜美林大学、異文化コミュニケーション学会、スイングバイ株式会社、東京-上海ビジネスフォーラム、アジア経営研究会、人生繁盛会(道端康予主催)等
・異文化コミュニケーション学会役員・会員誌編集長

■強み:中国ビジネス全般・マーケティング・異文化マネジメント

■その他プロフィール:
中国系華人。神戸出身。神戸商科大学を卒業。

■ユニチャームで勤務:ベビー、フェミニン、大人用おむつの中国・アジア地域のマーケティングを担当。当時上海に通算で約3年駐在。

■㈱ベネッセコーポレーションで勤務:教育に関する海外展開のため中国事業の支援及びFSを担当。

■㈱新日本科学で勤務:世界的No.3の医薬品の前臨床、臨床試験を行う研究開発の会社(CRO)で中国の会社立ち上げ、中国を中心に合弁パートナーとの交渉を担当。中国以外ではカンボジアの事業、ブータンの事業等を支援。

SIETARのHP
http://www.sietar-japan.org/index.html


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