勤務中の私的な電話 会社としての対応や処罰は?


相談:


 ある従業員が勤務時間中に明らかに私的と思われる電話をしています。またスマートフォンも良く見ているのですが、どうも勤務時間中に株取引をしているようです。どのような対応が考えられますか?




回答:


 このような勤務中の携帯電話の私的利用のケースについては、就業規則に違反して勤務を怠っていたと評価することは可能です。

 しかし情状は重いとはいえず、直ちに解雇ができるわけではありません。解雇には”著しく”就業規則を違反したと評価できることが必要だからです

 まずは証拠集めをしたうえで、警告や罰金等の軽めの対応から開始することが考えられます。


解説:


(1)就業規則




 前提として、こうした行為を罰するための規定が就業規則に存在する必要があります。

 中国における日系企業においては、就業規則について法律上求められる手続が適切に行われておらず、裁判や労働仲裁等で、就業規則の規定が無効と争われるケースが散見されるため注意が必要です

 中国における就業規則(中国語で規章)は、中国労働契約法4条に拠って「従業員全体(又は代表大会)の討論を経て、労働組合又は従業員代表と平等に協議を経る」という手続が要求されます。

 上海市等における実務では、従業員の同意取得をもって、こうした手続がされたことの証拠とされています。しかし地方によっては、同意の存在は手続の有無を推認させるだけであると考えて、手続の行われた事実(議事録)も要求されるケースもあります。

 いずれにしろこうした有効な手続を欠いている場合で、就業規則に基づいて罰したとき、就業規則の有効性が問題にされることになります。

 冒頭の勤務時間中の私的な携帯電話の使用を罰するためには、有効な手続を経た就業規則において、例えば、「会社内で私用電話をかけ又は私用電子メールを送信した場合」や「業務に怠慢で、労働時間に飲食、私語、又は業務と関係のないインターネット、SNS、ゲーム、その他携帯電話又はパソコンによるアプリケーションを利用した場合」といった規定を入れておく必要があります。

(2)就業規則における違反と処罰


就業規則で定めておく処罰には、以下のような種類が考えられます。この区分は法定のものではありませんのでこれと異なった処罰も考えられます。

しかし人権等を侵害するような処罰は会社の自主権の権限内といえないのは当然です。

(a) 警告 書面等で行為が就業規則違反であることを告げます。

 下記の罰金・減給としばしば併用されます。

(b) 罰金 罰金を科します。罰金の金額については、原則的には法律上の定めはありません。但し例えば上海市では企業賃金支払弁法で、労働者の原因によって使用者に損害を与えた場合で労働者の給料から賠償費用を控除するときには、賃金の20%を超えてはならないとされています。罰金の上限についてこの数字を上限の参考としている企業もあります。

(c) 減給 給料を減給します。特に減給の金額の上限はありませんが、上記罰金と同様に考えることも出来ます。この際、減給と共に該当する労働時間を出勤させず自宅待機を命じることができる旨の規定を定めておくと問題従業員を出社させたくない場合に重宝します。

(d) 降格 降格を行います。減給を伴う可能性があることも記述しておいた方がいいでしょう。

(e) 退職勧告 退職を勧告します。あくまで合意解除を狙って勧告を行います。

(f) 労働解除 解除を行います。但し就業規則に厳重に違反した場合のみ解除できると労働契約法で定められています。


(3)違反事項と処罰の内容の関係




 違反事項とどの処罰を適用するかの関係については、就業規則の形式によって

(1) 全ての違反事項を列挙したうえでどの処罰をするかを事案発生時に会社が選択するもの
(2) 処罰事項ごとに違反事項を列挙するものに大別されます。

(1)の方が柔軟性はありますが、(2)の方が会社にとってどの処罰を適用するか判断がしやすいと言えます。

(4)本件の場合


 この程度の就業規則違反で直ちに労働契約を解除すれば、度を超えた懲戒的労働契約解除と判断されることは間違いありません。

 警告又は罰金が妥当といえるケースでしょう。しかしこうした電話の私的行為が積み重なって会社の経営生産に影響を与えているのであれば警告、罰金をしっかり行って抑止効果を狙うべきです。  

 なお就業規則に「行為をしていたことが明らかであるのに合理的な理由なく警告書等へのサインを拒む場合」についても減給以上の処罰とする規定も入れておくべきでしょう。就業規則違反の証拠として警告書や事実確認書にサインをもらうことは必須ですがこうしたサインを拒絶する事案が多いためです。

以 上(執筆者:東城 聡)


東城 聡

東城 聡
http://uryuitoga.com/

弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所 上海代表処 首席代表弁護士
米国系コンサルファームに務めたのち、弁護士資格を取得。
渉外事務所で国内外の企業法務、裁判業務を経験した後に、上海・日本にて日系企業の支援を行う。
主要取扱業務:中国向け投資、中国子会社運営、労働問題(企業側)、リストラクチャリング、人事コンサルティング

【寄稿者にメッセージを送る】

著書


Facebookページにご参加ください


更新情報やランキング情報、その他facebookページでしか配信されない情報も届きます。下記より「いいね」を押して参加ください。




中国ビジネスヘッドラインの購読にはRSSとtwitterが便利です


中国ビジネスヘッドラインの更新情報はRSSとtwitterでもお届けしています。
フォローして最新情報を見逃さないようにしてください。


 RSSリーダーで購読する   

メルマガ登録

 アクセスランキング(24時間)
  • もっと見る / 週間ランキング / 月間ランキング
  • 新着記事
    PR
    メルマガ登録