カジノの権利、それは「売るわけが無い権利」 マカオにおけるカジノライセンスの構造と現状


数か月前、日本の記事でこの様なものを見た。

竹内力の所属事務所 1000億円規模のホテル買収プロジェクトに関与か(Livedoor NEWS)
http://news.livedoor.com/article/detail/12631704/

 その後、この案件は半ば事件性を帯びた状態でお蔵入りになったようだ。

 このニュースを読んだ当時の感想はたったのひと言。

 「は?」だった。

 なぜか?

 カジノの権利、それは「売るわけが無い権利」であるからだ

 最近、日本でのカジノ解禁を巡って様々な言葉が跳梁跋扈している。良く聞く言葉が「カジノ王」。地元マカオにいる人間から言わせてもらうと『王様何人おるねん?』である。

 あれも王様、これも王様。数の多さに於いては日本の合コン並みにたくさんの王様が存在する。

 これはマスコミの勉強不足もさることながら、日本人にとってマカオのカジノライセンスの構造がキチンと理解されていないところに起因した問題であると思われる。

 そこで今回はマカオに於けるカジノライセンスの現状を簡単に説明したい。


マカオに於けるカジノライセンスの現状




 まずマカオに於いてのカジノライセンス。このメインライセンスは三つしかない。その所有会社は以下の通り。

A.SJM: Sociedade de Jogos de Macau, S. A./澳門博彩股份有限公司
B.Wynn: Wynn Resorts (Macau), S.A./永利渡假村(澳門)股份有限公司
C.Galaxy: Galaxy Casino, S.A./銀河娛樂場股份有限公司

 この三社である。これらにそれぞれサブライセンスとして次の会社が紐付いている。

A-1.MGM: MGM Grand Paradise, S.A./美高梅金殿超濠股份有限公司
B-1.メルコ: Melco Resorts & Entertainment Limited./ 新濠博亞娛樂有限公司
C-1.サンズ: Venetian Macau, S.A./威尼斯人澳門股份有限公司

 この辺りをざっくりと事情通的に『マカオのカジノライセンスは6つある』と言われている所以だが実際は3つである。

 ちょっと待って欲しい。マカオにカジノはいくつある?

 前記のA-Cのライセンスに紐付いている通りにIR施設を並べてみよう。

系統A-グランドリスボア・リスボアホテル・MGM・ポンテ16・海立方・ランドマークホテル・ホテルリージェンシー(カジノタイパ)・バビロン・カーサリアル・ホリデーイン・エンペラーパレス(ジャッキー・チェンが関わっている事で知られる)・ホテルフォーチュナー・グランドビューホテル・ゴールデンドラゴン・グランドラパ(集美)・金碧パラダイス・蘭桂
坊・凱旋門ホテル・レジェンドパレス・ジョッキークラブ

系統B-Wynn HOTEL・Wynn PALACE・アルティラホテル・カジノタイパスクェア・COD・STUDIO CITY

系統C-Galaxy Macau・スターワールドホテル・プレジデントホテル・リオホテル・ワールドホテル・ブロードウェイ・ベネチアンマカオ・サンズマカオ・プラザ・パリシアン・サンズコタイセントラル

 これだけで37ものIR施設があるわけだ。そしてこれらは更に小さな規模のカジノやくじ等へと紐付いている。

*各カジノライセンスとIR施設の資本関係は無視し、カジノライセンスの紐付けのみでグループ分けしました。

**マカオ政府発表では39となっていますが、ここには37が記載されております。現在、水上カジノと北京王府は休止しております( いずれもSJM)。

 日本で良く紹介されているのはメルコのローレンス・ホー氏である。大の日本好き。日本の良き理解者の一人である。そしてSJMの総帥であるスタンレー・ホー御大の子息である。このメルコはWynnに紐付けられている。

 Wynnの総帥はあのネバダのカジノ王、スティーブ・ウィン氏であり、つい最近まで日本のユニバーサル会長の岡田氏もオーナーであった。

 そう考えると日本のメディアに踊る文字、ローレンス氏をカジノ王とするには少々無理がないか? と思えてくる。王様と言うよりはカジノの王子様と言った方が正解かもしれない。

 またMGMの総帥パンシー・ホーもスタンレー・ホーの実娘である。そうなるとマカオカジノ6強の内、3強までが法人の所属を問わず一つのファミリーの人間で構成されている事が分かる。

 そこで、である。

 これらの6強は香港市場に上場されている。と、なるとその株式は誰でも証券会社で買える訳だ。

 冒頭の”カジノ買収”の意味はまさか現金持って香港の証券会社で

「株、ギョーサン買いまっせ〜!」
「ほな、売ってもらいまひょ〜か〜!」

 と言う訳ではなさそうである。


何を買おうとしていたのか?




 そうなると何を買おうとしていたのか?

 現実に売買の話しがあるとすると6強のその下に紐付いているIR施設を指す事が多い。実際に自分達にもここに記している系統の売却の話しが来た事がある。

 もちろんそれはライセンスの更新時期、その更新後の保証は無い事(つまりIR施設は買ったけどお目当のカジノライセンスは更新されずに無くなるかもしれない)、そして肝心のカジノライセンスは◯◯のライセンスを使用していて売却希望額が◯◯◯億円と言う大変に親切な内容だったと記憶している。

 また日本のパチンコ屋が”カジノに投資”や”カジノ買収”と凄んで来た事もあった。

 最初のケースは結婚前の家内が所属していたIR施設。2回目は私達ファミリーが懇意にしている方が所有しているグループだ。

 我々はビジネスに直接関わっていなかったから良かったものの、それはそれは見事なコケっぷりだった。カネだけドブに捨てて終わっている。

 またマカオでは人気の無いパチンコ機を入れようとしていたのも敗因である部分もある。IR施設を買うのは”アリ”と思うがカジノは何れにしても三強のライセンスであるからその部分の儲けは期待できない。胴元がゴソッと持って行くのは当然である。

 すると巨大なホテル施設を抱え、集客をし、テナントを入れ、と言う厳しいジョブメニューだけが買収後のメイン業務になる。ホテルの稼働率を常に80%以上に持っていけるのか?

 マカオ市内を歩くにも大名行列で歩かなければならない人たちが、中国本土の旅行会社にセールスをして大量の客を引っ張って来れるのか?

 言わなくても結果が見える。

 冒頭の買収事件はむしろ成立しなくて良かったと思える。本当に買収するのであれば金融投資として参加し、適正なリターンを求めるのが正論である。(執筆者:澤野 勝治)


澤野 勝治

澤野 勝治
https://www.k2s.asia/

1996年、中国初のレーシングコース 広東省珠海国際サーキットのオープニングを 皮切りに中国モータースポーツに深く関わる。2008年より上海に移転し台湾資本の企業でビジネスプラ ンニングを担当。北京VW、一汽豊田のプロモーションの企画立案を行う。2010年、結婚を機にマカオへ移住。日系マカオ人の妻と共にビジネスサポート・貿易業であるK2S HOLDINGS LTD.とレーシングサービスカンパニーである金狼賽車有限公司【Gold Wolf Racing Ltd.】を設立。 2012年度よりインドへも進出。インドモータースポーツに初めて参加した日系モータースポーツカンパニーとなった。2013年度より中国本土・香港・マカオ・フィリピン・インドのPUMAモータースポーツギアの総代理店となる。そしてこの夏から上海へも再進出を果たし、業務の幅が広い実業公司として上海駿雄貿易有限公司を設立し総経理に就任。一般ビジネスではマカオ大学や政府・行政機関の通訳・翻訳や現地弁護士事務所の日系企業向けの作業を担当。ロジスティックから小型家電製品開発まで幅広い企業活動を展開中。
尚美音楽学院 電子オルガン科中退と言う変りダネ。

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