中国の「就労ビザのランク付け制度」と日本人の中国知識



 既にいくつかのウェブニュースなどで2017年4月から、中国で働くための「就労ビザ」更新の際に「ランク付け」が行われ、ランク如何によっては就労ビザの更新を拒絶されることになることが報じられている。

 詳細は、ネットで調べれば日本語記事がいくつか出てくるので、そちらを見ていただきたいが、これに対して、中国で勤務している日本人の間では様々な意見が飛び交っている。

「中国はなぜこんな制度を導入しようとしているんだ」
「現場が混乱するだけだ」
「今まで中国経済に貢献してきたのに、こんな仕打ちをするのか」
「俺、自己採点したらランク外なんだが追い出されるのかな」

 上記のような意見が主に聞かれる。

 しかし、筆者はこのニュースに特に驚きはしなかった。

 というのも、中国は社会主義国家であり、外国人に対して閉鎖的な側面がある。(このことは、以前にも筆者は指摘したことがある。)

 この外国人に対して閉鎖的な具体的な表れが、外国人に対する憲法上の権利観である。中国憲法の解釈上、外国人に対する「就労する権利」は完全には認められないとしている。

 この理由は、中国における就労する権利は「国家が自国民のために職場を用意すること」であり、「外国人はこの権利の保障の枠外にある」と考えられているからである。

 そのため、今まで中国で外国人が就労していることは「憲法上の保障を受けていないが黙認されている」に過ぎない状態だったのである。

 逆に言えば、「政府が国内の外国人が中国人の就労の機会を奪っている」と判断すれば、当然に外国人は追い出される。

 そしてそもそもが中国で外国人が就労すること自体、「外国人から技術を学ぶため」という側面が強いので、学び終わった、外国人から学ぶものはもうないと判断されればこれまた容赦なく追い出される。今回のビザのランク付け制度はこの理由によるところが大きいように思える。

 そして、このような権利観は実は「教育を受ける権利」も同様なのだ。すなわち、中国において「教育を受ける権利」とは、「国家が自国民のために学校を用意すること」なので、留学ビザで中国に滞在している外国人にも上と全く同じ論理が当てはまる。

 上のような中国の権利構成を知っていれば、今回の就労ビザのランク付け制度も、「ああ、ついに来たか」程度の感想しか出てこない。むしろ、このニュースに大騒ぎしている中国に関わるビジネスマンは、中国に対する知識がなさすぎた、の一言で片づけられるだろう。

 筆者は、実は上記内容で4年ほど前にセミナーをやったことがあり、中国の権利観から、外国人がいつか追い出される可能性に既に言及していた。そのときのセミナーの締め言葉をここに引用して終わりにしたい。

 「中国で生活しているとついつい日本と同じような国と思ってしまうことがあります。しかし、今お話したように中国は日本などとは根本から異なる理論で運営されている社会主義国家です。そのため私たちもいつ追い出されるか分かりません。就労にしても留学にしても、明日追い出されるかもしれない、と常に考え、一日一日を大切にして中国で生きていきましょう」。(執筆者:高橋 孝治)


高橋 孝治

高橋 孝治
http://ameblo.jp/takahashi-chinese-law/

法律諮詢師(中国政府認定法律コンサルタント)
日本文化大学卒業・学士(法学)。法政大学大学院修了・会計修士(MBA)。都内社労士事務所に勤務するも中国法の魅力にとりつかれ、勤務の傍ら放送大学大学院修了・修士(学術)研究領域:中国法。後に退職・渡中し、中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法研究の傍ら、中国法に関する執筆・講演などを行っている。特定社労士有資格者、行政書士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。出演テレビ番組に「月曜から夜ふかし」、「一虎一席談(中国・香港で放送)」。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(単著・労働調査会、2015年)、『中国年鑑2016』(共著・中国研究所(編)、「治安・犯罪動向の章」担当。明石書店、2016年)ほか。「高橋孝治の中国法教室」を『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて連載中。詳しくは「高橋孝治 中国」でWEBを検索!

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