一人っ子政策は放棄されが、中国の少子化現象は出口が見えるか?


 全国二千万中国ヘッドライン愛読者のみなさまごきげんよう。中国語講座チンプンカンプンのドラゴンならちゃんです。

 さて、吾輩2015年の11月を山東省チンタオ・ウエハイで過ごす間、実に歴史的瞬間に二度も遭遇する事になったのだった。その一つは中台首脳会談の発表(2015年11月7日実現)。つづいて一人っ子政策の放棄(2015年11月3日発表)である。

 今回取り上げるテーマは後者、一人っ子政策放棄関連である。


中国の家族観と「一人っ子政策」


 そもそも一人っ子政策が中国人民の生活に投げかけた影響とはどのようなものだったのか? 吾輩が中国各地で目の当たりにした現実5つを以下に列挙してみたい。

中国各地で目の当たりにした現実5つ




1. 堕胎の商業化⇒「堕胎するなら〇〇医院へ。無痛で安全、しかも廉価」こんなCMが何気にオンエアされる国は吾輩寡聞にして中国以外で知らない。

2. 男女比の偏り⇒小学校の校庭で学童が整列している場面を見に行こう。日本ならずとも「フツーの国」ならば男女そんなに偏りはない。しかし中国の場合たいてい男子が女子の1.5倍くらいに見受けられる。本件は「前述」の「商業堕胎」で女子が間引かれた結果と説明されている。

3. 家族構成のゆがみ→不自然な「双子」。先にネタばらしをしてしまおう。夫婦は「フツーに」第一子を出産。それから「命がけの工作」すなわち産間もない嫁に無理やり妊娠させてもう一子を出産させる。そのうえで政府(この場合は地方自治体の役所)に「双子が生まれた」と申告してしまうのだ。
 役所がそんな出生届を受理するためにどのくらいの「接待費」がかかるか?読者各位の想像力に任せることとしたい。

4. 子供のいない家庭に無理やり養子縁組または「誘拐」。なぜか中国の場合、誘拐実行犯は死刑となっても「養父母」は刑事罰の対象にならないとのこと。中国全土で現在20万人の誘拐被害者がいるらしい。

5. 番外ながら「米国入国にあたって難民申請」させる中国公民専門の「査証屋」を知っている。

 すなわち「米国入国時、アメリカの出入国審査官に中国政府に政治迫害を受けた」と申告して保護を要請するのだそうだ。この政治迫害というのが「子供の出産が政府によって禁止された」帰国すれば投獄されるというものだ。アメリカはこんな理由で「中国公民をどのくらい保護」したのだろう?

 査証屋は「これが(米国在留許可申請)一番早くて確実」とか言ってたっけ。閑話休題。

安心・安全・明るい人口流産のCM.写真は大学病院の広告

≪安心・安全・明るい人口流産のCM.写真は大学病院の広告≫



 さて、本題に戻ろう。1-4のごとく、ここまで一人っ子政策に「抜け穴を穿ってきた」中国人は、この「一人っ子政策放棄」を手放しでよろこんでいるのだろうか?

 答えはナカナカ「びみょー」なのである。

 と言うわけで吾輩の二人の元カノたちに登場していただこう。

キャリアウーマンのケンケン(35歳)


戦略家のケンケンは、ふたりっ子解禁の機を逃さず妊娠を選んだ。だけど中国の女性の大部分は?

≪戦略家のケンケン(右)は、ふたりっ子解禁の機を逃さず妊娠を選んだ。だけど中国の女性の大部分は?≫



 最初の証言者はケンケン(35歳)。青山大学日本語学科卒、現在は美容系企業のセールスマネジャーを務めるキャリアウーマン。彼女とは独身時代から数えてもう10年以上のおつきあいである。

 実は彼女、『中央政府が一人っ子政策の改革を検討』始めた段階でタイミングを読んで? 見事妊活に成功(現在4か月)のオメデタなのである。年に2,3度日本に業務出張をこなしつつマンション二件を転がしながらの妊娠とは。いやはや生き馬の目を抜く中国人の鏡。さすがである。

 では、ケンケンは、「どんな家庭」を築いていたのか?

 これがなかなか「一筋縄」ではないのである。まずは、彼女の子育て奮闘記をかいつまんでみよう。

 実の母親との軋轢→「私は母親からボッタクラレました。」ただならぬ発言だが、その真意から「中国の家族観」を読み取れる。

 母は、保育料と称して私にとんでもないお金を要求しました。私は毎月払い続けたけどついに耐えられなくて母に聞きました。

「こんなたくさんのおカネどうしたいの?」

 母は言うのです。

「息子(ケンケンの弟)の結婚資金に決まってるじゃない。あなたは家を出たのよ。弟は家に残るのよ。中国では家を継承する男子が一番大事なの」

 私は堪らなくなってダンナの母親に子育てを頼みました。すると旦那の母親は自分の交通費まで負担して子供のお守りをしてくれました。ダンナの母親にすれば男の子の系譜が続くのだから、喜ぶのが当たり前です。これが中国の家族観なのである。


威海市のホイホイ(27歳)


女性が「その気に」なってくれる環境を整備しない限り、誰も少子化現象は食い止めることは不可能。

≪元「ホテルの黒服マネジャー」ホイホイと幸せな一家。女性が「その気に」なってくれる環境を整備しない限り、誰も少子化現象は食い止めることは不可能≫



 次の証言者はウエハイ(威海)市のホイホイ(27歳)。彼女も画像のようにムスメ時代からの「ながーいおつきあい」である。

 合コンで知り合ったという主人は目下、山東省首都のジーナン(済南)単身赴任中。現在一歳のムスメを双方の両親(つまり4名のサポーター)の援助を受けながら専子育て業ママに徹し、この9月からフルタイムの勤務を始めたところなのである。

 元々共稼ぎが原則の中国。かといって幼稚園は一歳の子は預かってくれない。選択肢は託児所か在宅子育てということだが託児所不足は中国も日本も同じらしい。

 やむなく夫側の母親(中国語で奶奶ナイナイ)のもとに毎朝愛娘を預けて出勤するのだそうだ。勤務はいわゆる九時五時だが、子供の送迎で前後2時間づつ使ってしまうとか。

「うちの子、ワタシと同じで自己主張はっきりしてるのよね。だんなの母親あんまり好きじゃないんだな。毎朝そんなわけでひと悶着するんだけど、このままあの子とずーっと一緒にいたらワタシがどうかなっちゃうわ」

 以前は五つ星ホテルで二十歳の黒服マネジャーだったホイホイだが、何年振りかで社会復帰して慣れぬ会社つとめを始めた背景を、こう語ってくれた。

「中央(政府)は一人っ子政策放棄したらしいね。もう一人生むの?」吾輩の質問にホイホイは「NO!」ときっぱり否定。

「考えてみてよ。この子に、今でもどれだけ苦労してるか、さらにこれから、どれだけ手間とお金がかかると思ってるの? もう一人生むなんて、「ありえない」

らおごん(老公→ダーリンの意味)なんて気楽なもんだから『(自分は子育てに参加しないけど)なにかこまったらジジばばにたのめばいいじゃん』なんて言うけれど。子供の体調の悪い時もあるのよ。ジジばばが預かれるときは体調のいい時だけ。助けのほしい時には頼れる先はワタシ自身しかないの。こんな状態でどうしてもう一人生めって言うの?」

 生娘時代から頭のいい子ではあったけど、こんなに理論的で説得力ある話が展開できるとは。母親ってのは強いもんだ。

 思い返せば吾輩自身の子育て期間中、海外勤務ばかりで実質子育て放棄してきた吾輩としてはまったく耳の痛いハナシばかりだ。

 結局、究極の少子化対策とは母親が安心して子供を産んで育てられる愛にあふれた環境を作り出せるかどうか?

 「私、あなたのためにもう一人生みたい」こんなセリフを妻に言わせるステキなダーリン。安心して子育てできる家族関係。そしてそんな家庭をはぐくめる社会を国家が作り出せかどうか? という問いかけなのだろう。(執筆者:楢崎 宣夫)


楢崎 宣夫

楢崎 宣夫
http://chinpunkanpun-school.com/

売上三割増をめざす中国語研究会 代表
1957年大阪生まれ。
1980年 東京農業大学農学部卒。同時に大阪の食品メーカー就職。

1988年工場勤務を経て海外事業(中国原料開発・タイランド工場建設)に参画。同時に業務外で中国残留婦人帰国を実現する市民の会に参加。
1990年中国人帰国者の就業・生活支援を通じて中国語をブラッシュ・アップ。

1995年 阪神大震災を機に社内プロジェクト高齢者食材チームを立ち上げる。

2004年 中国山東省新会社設立プロジェクトに志願して山東省石島に進出。JUSCO YOKADOなどで試食販売を自ら実施。営業活動を展開。中国でモノを実際に売った数少ない日本人と自負。販売中「日本語うまいヒトがいる」と多数の日本人観光客から賞賛を浴びた(?)

2010年 家族の介護のため帰国。

2011年 大阪で、売上三割増を目指す中国語研究会・中国語講座「チンプンカンプン」を開講。
インバウンド取り込みをはかる商店主やショップ店員にゼロからスタートする中国語を指導する。中国語は三カ月で仮免許まで到達できます。あなたもお気軽にご参加ください。http://www.chinpunkanpun-uriage3wariup.jp/
趣味 語学(英語・中国語・タイ語・韓国語) 弓道二段
座右の銘 「人生は足りないものが問題ではない。あるものをどう活用するかが問題なのだ」A アドラー
 「情報が流れれば人が動く。人が動けばモノが売れる」 P/F ドラッカー
 「ケンカ買います。人生一度きり」

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