日本の温泉旅館は変わる ネット環境整備にみる「革新力」


 3月末、友人たちと一緒に伊豆半島を遊びに行った。宿泊は伊東の暖香園という大型の温泉旅館に泊った。東京に近いこともあり、実は近年、毎年のように伊豆を訪問している。ただ、犬を飼うようになってからのここ数年はずっとペット同伴が認められる民宿や旅館を使っている。その意味では、伊豆で大型温泉旅館での宿泊は5年ぶりだ。


5年前、温泉旅館でネット接続できず焦る


 5年前は天皇陛下も利用したことがある長岡温泉の高級大型温泉旅館に泊った。ちょうど私がもっていた連載コラムの締切日に当たっていた。チェックイン手続きを済ませ、急いでネット環境を確かめたら、館内はインターネットが使えないばかりでなく、玄関にもWiFiといったネット環境の基礎設備はなかった。

 泣きだしたくなるほどパニック状態に落ちたが、平静さを保つように自分に言い聞かせながら、次のスケジュールを予定通りに進めた。次は観光協会の訪問だったが、そこでもネット事情を確かめたら、インターネットが使える温泉旅館はまずないと言われた。しかし、観光協会会長が経営する旅館だけは、ロビーにインターネットが使えるような空間が作られている、と教えられた。

 早速、そこを使わせてもらって原稿をぎりぎりのところで新聞社に送付することができた。なぜその旅館だけインターネット環境を確保できたのか、と興味津々に確かめたら、おかみさんの息子さんがイギリス留学経験をもっているから、ネット環境の重要性を認識してるとのことだった。

 その一部始終を見ていた宿泊先の旅館の責任者はその日に、WiFiのルーターの購入を部下に指示した。少なくともロビーやロビーの近くにある喫茶店にネット環境を確保できるように動き出した。


各客室にWiFiルーターが完備されていた


 暖香園はこれまで利用したことはなかった。しかし、5年ぶりに泊る温泉旅館としては、少なくともロビー周辺はネット環境が整備できているだろうとチェックインする前に、私はすでに想定していた。案の定、予想していた通り、暖香園はその期待を裏切らなかった。それどころか、私を感心させたのは、客室の中でもソフトバンクのWiFiのルーターが設置されていた。

 そのお陰で私の部屋に集まった仲間たちが深夜までfacebookや中国のSNSである微信(WeChat)などを交信しながら、昼間の観光先で撮影した写真などを交換したりして話題を大いに盛り上げた。

 日本の大抵の旅館は設備が老朽化してきて、ネット環境を整備するにはかなりの出費を覚悟しないといけない。通信会社の力を上手に活用しながら、各客室にまでWiFiのルーターを持ち込んだ暖香園はやはりすごい。保守的で他力本願主義というイメージが強い温泉旅館に対して私がもっていたイメージもこの一件でだいぶ変わった思いがした。(執筆者:莫 邦富)


莫 邦富

莫 邦富
http://www.mo-office.jp/

作家・ジャーナリスト。1953年、上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒。同大学講師を経て、85年に来日。95年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続けている。また、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させたことでも知られる。
日本企業の中国進出、中国向け商品のネーミング開発、日中地方自治体や企業に対するコンサルタントも積極的に進めている。博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。安徽省観光大使。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。ニューコン株式会社(IT企業)社外取締役。大妻女子大学特任教授など。

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