日中経済交流の新しいキーワード 「社区経済」と「社区商業」


 中国の改革・開放は中国に夥しい新語をもたらした。たとえば、「社区」だ。かつては“街道”という概念で締めくくっていた地域エリアが経済の発展と人々の価値観の多様化でどんどん進化してきて、ついに“街道”という言葉で締めくくれなくなった。約20年前から、街道のかわりに“社区”という表現を使うようになった。

 日本の実例を挙げて説明すると、六本木ヒルズに似通う。再開発前の六本木ヒルズあたりは町内会で締めくくれたが、そのエリアが再開発を経て六本木ヒルズへ鮮やかに変身した。さまざまな施設をもつ六本木ヒルズに対しては、町内会という言葉も組織も合わなくなった。そこへ登場したのが“社区”だ。つまりコミュニティのことを言う。


更なる進化を遂げる「社区」


 ところで、誕生して20年くらいの歳月を過ぎたその新語であるはずの“社区”も大きく変貌し、そのさらなる進化の姿を求められるようになった。今年に入ってから、新年早々、上海で「社区経済」、「社区商業」について女性経営者からビジネス相談を受けた。

 上海には、都市開発のなかで無数のミニ六本木ヒルズが誕生した。一昔か二昔前なら、こうしたミニ六本木ヒルズに「美食広場」つまりフードコートを付ければ、住民はもう大満足し、不動産開発業者も大喜びだった。しかし、いまでは、美食広場だけではもう当たり前すぎて、より住民の満足感を高めるサービス、ビジネスを提供できないと、不動産の価値も上がらない。

 こうした市場ニーズに応えるために、中国には、「社区経済」、「社区商業」といった言葉が現れたように、こうしたビジネス発想が広がったのだ。もちろん、それに付随して「社区企業」たるものも注目されるようになった。


中国の社区企業関係者も注目


 東京のわが家が入っているマンションもかつては精工時計の工場だった。その再開発によって、今やミニ六本木ヒルズのようなコミュニティつまり社区に変身した。昨年から、中国の社区企業関連の関係者たちはわが家が入居しているマンションをはじめコミュニティ全体を何度か視察に来た。

 ショッピングセンターにある買い物客用の一時託児所、自己管理による住民専用図書室、いろいろな住民同士のサークル、クリニック、クリーニング、さらに防災倉庫などなど、そのすべてが社区企業関係者の関心を集めた。

 その話が女性社長の耳に入り、ビジネス相談を持ちかけられたのだ。留学生時代、つまり約30年前の頃、青木建設と日本設計事務所が上海で五つ星のホテル・太平洋飯店と上海世界貿易センターを建てた。私はその図面の翻訳作業をアルバイトとして担当していた。

 当時の中国では、ハードを作る日本の技術、経験とノウハウを求めていた。新日鉄から多くのものを吸収した宝山製鉄所、新幹線技術が生きている中国版新幹線とも言える高速鉄道はまさにその代表例である。

 しかし、むしろ今はよりソフトの面に視線を向けている。数年前から、私は日中間の経済交流はハードからソフトへシフトする時代を迎えたと主張している。社区経済や社区商業はひょっとしたら、日中経済交流の新しい代表例になれるかもしれない。(執筆者:莫 邦富)


莫 邦富

莫 邦富
http://www.mo-office.jp/

作家・ジャーナリスト。1953年、上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒。同大学講師を経て、85年に来日。95年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続けている。また、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させたことでも知られる。
日本企業の中国進出、中国向け商品のネーミング開発、日中地方自治体や企業に対するコンサルタントも積極的に進めている。博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。安徽省観光大使。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。ニューコン株式会社(IT企業)社外取締役。大妻女子大学特任教授など。

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