SNS時代の観光業にとって「WiFi」の有無は死活問題に


 10月下旬、沖縄・中国映画週間のイベントを終了した翌日の早朝、私はその日の第一便で宮古島へ飛び、2年ぶりの同島訪問取材を始めた。27号台風が接近中という天気予報に注意を払いながら、できるだけ多くのところを回ろうと島内のいろいろな場所を訪ねていた。

 2日目の昼食は時間を節約するために、ホテルに帰らずに移動途中のレストランで取った。海に面したレストランで、質素だが味わいがあったところだ。店の経営者らしい女性もそこで働いている男の人も30代で若い。

 締め切りの連載コラムの原稿をまだ完成させていなかった私は、食事を慌ただしく済ませてから、原稿の仕上げに没頭した。ようやく原稿を書き上げ、インターネットを通して送信しようとすると、WiFiの信号がないのに気付いた。

 「この店にはWiFiはないのですか」と店員の男性に確認すると、「今日、切っています」との回答が戻ってきた。それはおかしいと思った私は、経営者らしい女性に再度確認すると、その店には最初からWiFiはなかったのだった。

 原稿の送信をあきらめざるを得なかった私は、思わず1年前のある出来事を思い出した。

 約1年前の今頃、石川県を回って取材していた。最後の日に、東京へ帰る飛行機に乗るまでの間に、1時間ほどの余裕ができてしまった。加賀市の案内担当者の提案を受け入れ、日本海に面した一軒家の喫茶店に移動し、そこでコーヒーを飲みながら、荒れ始めた日本海を眺めていた。そこで私は海の表情を写真に収め、中国のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)である微博にアップした。

 わずか1時間で10数件の問い合わせが来た。その大半は中国本土からの問い合わせで、いずれもこの喫茶店の場所を尋ねたものだ。日本訪問時に、この喫茶店を訪問したいという希望を伝えてくれた。

 情報を発信してすぐにこんな効果が出てくるのを見た私はもちろん嬉しかったが、取材旅行中、ずっと案内役を務めてくれた加賀市の女性職員も大いに喜んだ。地元の知名度アップにつながったからだ。

 海外での知名度アップという大きな課題に苦しんでいる宮古島の観光関係者にとっては、この2つの例はまさにいい対照を成している。

 WiFiがあるかどうかは、SNS時代の観光業にとっては、場合によっては死活問題になる。こうした認識をもっているから、私が観光懇話会委員を務める山梨県では、地方自治体の予算で県内の主要観光ポイントに、WiFi設備を取り付けた。

 それに比べて、宮古島の皆さんにはもっと努力してもらわないと、SNS時代の競争に負け、取り残されてしまう恐れがある。

 海に囲まれた島や山梨県のように山地が多い地域にとっては、WiFiは観光情報を送受信するための設備だけではなく、自然災害などが起きたときに、有効な通信インフラにもなる。

 そう思った私はその夜、観光協会の発起で開催された私の歓迎会で、あいさつのスピーチに、島内の観光ポイントへのWiFi設備の取り付けを呼び掛けた。次回、宮古島に来る時、そのWiFi環境がさらによく改善されているだろう。


莫 邦富

莫 邦富
http://www.mo-office.jp/

作家・ジャーナリスト。1953年、上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒。同大学講師を経て、85年に来日。95年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続けている。また、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させたことでも知られる。
日本企業の中国進出、中国向け商品のネーミング開発、日中地方自治体や企業に対するコンサルタントも積極的に進めている。博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。安徽省観光大使。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。ニューコン株式会社(IT企業)社外取締役。大妻女子大学特任教授など。

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