ディズニーランドの上海進出が中国にもたらしている大きな変化


 上海にディズニーランドを。この夢は、上海がすでに20年以上温めてきた。ディズニーランドとの交渉を開始したのが20年前だったのに、香港の立場を考えて、香港ディズニーランドの設立を優先させた。やむを得なかった政治判断とは言え、上海はおそらく秘かに泣いていたと思う。

 しかし、上海にディズニーランドを、という夢はいまやすでに現実の姿を見せ始めた。2011年4月6日には、川沙新鎮という上海市浦東の離れにある一角において同パークの建設が開始された。建設費用は約245億元(日本円でおよそ3500億円)。多くの建築機械がそこに集まり、大型トラックが忙しげに行き来している。



 2015年に開業というスケジュールに合わせて、上海は全力を挙げて疾走している。予定通り開業すればディズニーパークとしては12番目の開園となるが、13億の市場もある中国本土での開園は、いろいろな意味で、重大な意義をもっている。

 建設進捗を見ると、12年4月26日、上海ディズニーランドも含むプロジェクト全体の敷地がだいたい整備され、上海ディズニーランド本体の建設工事が開始した。13年5月24日、「奇幻童話城堡(Enchanted Storybook Castle/魔法がかかった童話のお城)」の建設にとりかかった。

 9月下旬、会議のために、上海に一時帰省した私は、建設現場を訪問してみた。案内してくれた上海ディズニーランド関係者の紹介で、一番印象に残った発言が知的所有権について強調したことだ。

 上海ディズニーランドの工事現場なのに、ディズニーランドという固有名詞もロゴもキャラクターの写真なども表示されていない。すべて「上海国際旅遊度假区」という名前で表示されている。上海ディズニーランド関係者も「私たちもこのプロジェクトを通して、知的所有権の重視と運用を学んでいる」とこの点を強調している。

 たとえば、次のような実例が問題にされていたという。ある集合住宅販売会社が、新規に売り出されたマンションのポスターに「上海ディズニーランドから1キロしか離れていない」といった文句を書きこんだら、ディズニーランド側から厳しく抗議された。

 ある見学グループが展示室で記念写真を撮ったら、写真のバックにミッキーマウスが写っていた。それも抗議のもとになった。

 「たいへんですが、いい勉強になっている。上海は中国の先を走らなければならない。だから、知的所有権の重視・保護・運用においてもさきがけの存在にならないといけない」とその関係者が発言に力を入れている。

 長い間、中国ビジネスにおいては知的所有権関連のトラブルが非常に多かった。ディズニーランドの上海進出によって、中国の知的所有権の重視と保護に大きな変化がもたらされているようだ。

 こうした方向性が守られていけば、いずれ中国も知的所有権を上手に運用できることになるだろう。こういった期待を胸に、上海ディズニーランドの建設現場を後にした。次に訪れるときは、上海ディズニーランドも開園しているだろう。


莫 邦富

莫 邦富
http://www.mo-office.jp/

作家・ジャーナリスト。1953年、上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒。同大学講師を経て、85年に来日。95年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続けている。また、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させたことでも知られる。
日本企業の中国進出、中国向け商品のネーミング開発、日中地方自治体や企業に対するコンサルタントも積極的に進めている。博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。安徽省観光大使。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。ニューコン株式会社(IT企業)社外取締役。大妻女子大学特任教授など。

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