中国『旅游法』でインバウンド業界(訪日観光)はこう変わる


  今年10月1日から中華人民共和国『旅游法』が施行される。 (今まで中国では国家としての『旅行業法』はなく『旅行社管理条例』として規定)今回の旅游法の制定で現状の中国旅行マーケットの仕組みが根本から改変され、現地中国旅行社としては造成するツアー内容や価格の変更を余儀なくさせられる。


『旅游法』のポイント


  最大の改変点は、下記の2点。
(1) ツアー行程へのショッピング店の組込み不可

(2) 現地旅行先でのオプショナルツアーの販売不可
  現在、中国国内で強く批判されている「強引なショッピングの斡旋」「強制的な現地オプショナルツアー販売」を徹底的に規制する姿勢だ。

  現状、中国での旅行(特に団体募集ツアー)では、完全に価格競争になっているため、旅行社でツアー設定をする際に、ギリギリまで基本ツアー料金を抑えることが求められている。そのため、出発後の現地滞在先において、コミッション収入を当てにした契約先ショッピング店への強引な斡旋や、現地オプショナルツアー販売を強制的に販売して、ツアー全体の利益をカバーしているのが実情である。

  例えば、上海から香港への4日間のツアーでは、基本ツアー価格が2,000元を切るツアーも設定されている。一方、現地に到着後、現地ガイドが、一日4~5軒のショッピング店を斡旋したり、オプショナルツアーを押し売りすることが横行している。

  極端なケースではツアー参加者が土産物やオプショナルツアーを購入しない場合、現地ガイドがツアーを中断したり、お客様を殴ったりすることもあり、ニュースで度々報道されている。また強制的に購入させられた土産物が市販価格の3~4倍で販売されていることも多く、帰国後、苦情につながるケースも少なくない。

  今後、『旅游法』が施行されると、そのような旅先でのコミッション収入やオプショナルツアー収入で利益をカバーすることが出来なくなるため、格安団体旅行ツアーの基本価格を大幅に値上げせざる負えなくなる。

  予測される値上げ幅は、下記の通り。

・香港 : 2,000元 ⇒ 4,000元へ

・韓国 : 3,000元 ⇒ 5,000元へ

・東南アジア(タイ、マレーシア等) : 2,000元 ⇒ 4,000元へ


日本のインバウンド業界に与える影響は?


  注目される【日本】への基本ツアー価格については、5,000元から6,000元程度と考えられており、他アジア諸国と比べると低めに抑えられると思われる。これは、日本国内の手配や現地ガイドは他アジア諸国に比べると、強引な斡旋や強制販売を比較的セーブしていることが大きな理由である。(日本国内の旅行業法の規制や常識の影響)

  とはいえ、間違いなく基本ツアー価格は上がることで少なからず集客に影響は出る。ただ、長期的な見地で考えると、今まで完全に価格中心で選ばれていた、東南アジア、韓国、香港へのツアーから、本来の観光要素のポテンシャルが高い【日本】へ、お客様がシフトしてくる可能性は充分にあると期待できる

  また、今回の改正により、訪日ツアーの中身も大きく変わってきそうだ。

  まずはショッピングについてであるが、現状の団体客が買い物を強いられている不適切な免税店(法外なショッピングコミッションを旅行社に支払って半ば強引に誘客、押し売りをしているようなお店)から、日本人からも評価の高い優良な百貨店、商店街店舗、ショッピングセンター、アウトレット、ディスカウントストアー、家電量販店、ドラッグストアーで購買することが増える。

  これは、日本のインバウンド業界にとっても、お客様にとっても良い環境になっていくことは明白である。今年8月に設立されたばかりの『ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)』にとって大きな追い風になりそうだ。

  次に、観光地・観光施設については、旅行社への集客手数料が高い観光施設から、日本国内でも人気のある観光地や観光施設や、特徴のある日本独自の美術館、博物館、科学館、体験施設への訪問が増える。本来、日本が誇る観光名所へ誘客が増えることによって、日本観光のイメージアップが図れるためリピーターの獲得も期待できる。

  そして、何よりも大きな変化としては、価格志向であった団体募集型ツアーから、本来の旅を自分思考で楽しむFIT型ツアーへ大きくシフトする点である。

  そうなると、本格的な中国からのインバウンド顧客の拡大が多いに期待される。


一方で残る懸念点


  一方で懸念点もある。中国国内の旅行業界では、法律の改正によって旅行マーケットの規律整備を実施することになるが、国からの押し付けでどこまで成果が出るのか、じっくり市場の反応を見ている状況である。

  また、まだまだ不安定な日中情勢の中で、観光査証(特に個人観光査証)の取得要件や承認審査が厳しくなっている状況や、通訳なしの外国人個人観光客の受入体制への不安感も拭いきれない事もあり、ポテンシャルの高い中国からのFIT市場をどこまで拡大していけるかという命題に対する懸念が残っているのも事実である。

  この件に関しては、別の機会に詳しく論説していきたい。


近藤 剛

近藤 剛
http://www.friendlyjp.com

株式会社フレンドリージャパン 代表取締役
1987年 早稲田大学商学部卒業。1987年~2009年 ANAセールス株式会社に22年間在籍。ANAセールス在籍中に、上海駐在・訪日旅行事業・海外旅行事業等々、幅広い経験を経て、 2009年に、株式会社フレンドリージャパンを設立致しました。上海駐在時に築いた中国国内旅行社のネットワークを活かし、BtoB戦略による中国人FIT顧客誘致促進をサポート致します。
BtoB販促冊子【壹游日本】年4回発刊。2012、2013年東京観光財団(TCVB)の中国アドバイザー就任。

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