中国ビジネスの肝は「兵貴神速」 迅速な決断で運命が決まる


莫邦富の中国ビジネス実践塾 第10回

  中国ビジネス現場に行くと、日本企業に対する不満や批判などがよく聞かれる。その一つは、中国にいる日本人には決断権限を与えられておらず、日本にある本社に用件の一つひとつを本社に伺い状を出して確認しないといけないということだ。しかし、その本社はなかなか判断してくれない。すると、いつまで経っても決断が降りなくなる。

  拙著『莫邦富の中国ことわざ玉手箱』(時事通信社出版社)に、私は日系企業のこの問題を取り上げ、次のように指摘している。

石橋を叩いて橋を渡る日本人の性格と日本企業の習性は知っている。
理解もしているつもりだ。
しかし、毎日石橋を叩くばかりで一向に橋を渡らないのでは困る。
  一方、中国ビジネス現場では、決断スピードの速さが常に求められる。先日、出張で北京を訪れ、ある新規ビジネス相談の場面に出会った。その決断スピードの速さを体験し、石橋を叩いても橋を渡るか渡らないかを「検討する」ばかりの日系企業との決断速度との差をいやというほど体感できた。

  北京でのその新規ビジネス相談の会合に、出席したのは4人。私と数日前に知り合ったばかりのG社長、Z社長、S社長だった。Z社長、S社長は私にとって初対面で、彼ら自身も互いに初対面だった。つまり、G社長の斡旋で、私たち3人が集まったのだ。

  そこで日本にあるツアープランに対する構想を私とG社長が提案し、プラン作りに長じるZ社長と旅客資源を大量にもつS社長に判断してもらった。1時間あまりの議論をした結果、それはいけると判断し、早期にテスト送客するようにしようと意見を統一した。

  そこで慎重を期して下見旅行をしようとスケジュールを相談した結果、2~3週間後に実施すると決まった。

  それと同時に、テスト送客とその後の大量送客のために、Z社長が飛行機の便と席の調査、ツアープラン作りを、S社長が顧客資源の確保のための予備調査に取り組み、私が日本の受け入れ先の確保、ツアープラン作りに必要な基本情報の提供を担当する、とそれぞれの役目を決めた。夕食もせずに初会合を終了し、それぞれ帰途についた。

  翌日の昼前に、S社長からの連絡が入った。「顧客資源の確保はほぼ問題ない。大至急、ツアープラン作成用の情報をもらいたい」。午後3時頃、航空便の確保も大丈夫とG社長を経由してZ社長からの連絡も入った。私は催促される立場に追い込まれた。東京にいる部下に日本の関係先との調整を早くするように催促のメールを連発した。

  日本に催促のメールを書きながら、私はある言葉を思い出した。「兵貴神速」だ。

  戦いは一瞬の判断で運命が決まる。だから、兵を動かすのは敏速果敢でなければいけない。中国古典の『三国志•魏書』の出典によるこの四字熟語は、迅速な判断が求められるビジネスの現場でもよく用いられる。

  北京での2泊の滞在は、迅速な判断と対応が求められ、兵貴神速の大事さを噛みしめる出張であった。


莫 邦富

莫 邦富
http://www.mo-office.jp/

作家・ジャーナリスト。1953年、上海市生まれ。上海外国語大学日本語学科卒。同大学講師を経て、85年に来日。95年に莫邦富事務所を設立。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続けている。また、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させたことでも知られる。
日本企業の中国進出、中国向け商品のネーミング開発、日中地方自治体や企業に対するコンサルタントも積極的に進めている。博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。安徽省観光大使。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。ニューコン株式会社(IT企業)社外取締役。大妻女子大学特任教授など。

【寄稿者にメッセージを送る】

著書


Facebookページにご参加ください


更新情報やランキング情報、その他facebookページでしか配信されない情報も届きます。下記より「いいね」を押して参加ください。




中国ビジネスヘッドラインの購読にはRSSとtwitterが便利です


中国ビジネスヘッドラインの更新情報はRSSとtwitterでもお届けしています。
フォローして最新情報を見逃さないようにしてください。


 RSSリーダーで購読する   

メルマガ登録