ミャンマーの安い人件費の裏側 認識しておくべき中国との歴史


  2013年2月11日のエコノミストに、「ミャンマーに於ける中国の歴史 手に負えない国境線」という記事があった。その記事によれば、中国とミャンマーの国境線は2,400kmもあり、ミャンマーの北部の山岳地帯はアフガニスタンのトライバルエリアと同様であり、両国が歴史上管理出来ない地域であるということだ。

  2012年10月にビルマの麻薬王Naw Khamはタイ北部のメコン川で、13人の中国人の水兵を殺害したので、死刑が宣告されたが、昔から中国とビルマの国境は犯罪組織と麻薬密売人の温床だ。中国政府はまたミャンマー軍とカチン独立軍との間の紛争が中国の中に飛び火する可能性について徐々に心配して来ている。

  中国当局はカチン州と雲南南部の避難キャンプから立ち退かせた数千人のカレンとカチン人たちは雲南北部の避難所へ避難させている。Zomiaという名称があるが、ここはチベットの端からベトナムの中央高原まで伸びている高原地帯の地域一帯のことの総称で、この名称はJames C. Scottが与えたのだが、彼の著書「統治から逃れる為の技術」の中で、国家形態に完全に組み入れられていない世界の中で、残されている最大の地域だと言っている。

  13世紀半ばのモンゴルの侵略によって、雲南の独立王国はほぼ500年の支配を終えた。官僚達はこの未開の地である雲南に左遷された。17世紀半ばからの清の時代を通じて、雲南、そして特に中国とビルマの国境地帯は犯罪者たちの避難所となった。不法な鉱山採掘者達、密輸業者達、逃亡者、自称軍司令官達が現地の少数民族集団、汚職をしている清の官僚、そしてビルマ人の略奪者達と共存していた。

  清王朝は18世紀にビルマ王と一連の国境での戦争を戦った。彼らはわずか数年の間にビルマに4回侵略した。毎回の試みは回を増すごとにより悲惨さを増した。皇帝は憤慨して、ビルマ王に対して精鋭の満州人のひどく凶暴な人たちを送り込んだ。

  彼にとって不運なのは熱帯の暑さと病気でビルマで彼らの将兵の多くが死んだ。20年後に貿易と外交関係がビルマと清王朝との間で復活したあとで、皇帝は証拠があるにもかかわらず、清が結局、この戦争は勝ったことにした。

  20世紀に入ってさえ、その国境地帯は逃亡者達と反乱軍の多くに避難場所を提供し続けた。1949年の共産党の勝利の結果、数千の兵士が名目上は蒋介石に忠誠を誓って、ビルマやタイに逃げた。その多くは台湾やアメリカ合衆国から武器や金銭の支援を受けて戦い続けた。他のものは犯罪組織に加わり、麻薬と海賊行為によって、生計を繋いだ。

  今日、ビルマと中国の政府はビルマと中国の国境地帯の孤立した谷間と山腹に支配の手を伸ばして来ているので、現地の地域組織はますます彼等の自治権を維持する事が難しくなってきているようだ。しかしながら、現地の人々は昔からの記憶がある。過去千年にわたって、彼等は何度も征服されて来た。しかし、彼等自身に完全な統治を許して来たことはなかった。今それが始められるのだろうかという疑問がある。

  このミャンマーは人件費は日本の7分の1で安いというが、そこにはこうした中国との歴史がある。中国政府は軍事政権時代の軍部と繋がっている。その彼等の投資も膨大だ。中国プロジェクトのミッソンダム建設中止をテインセイン大統領が行ったが、軍部の力がなくなっている訳ではないし、こう言う国家は法制面でも不透明だ。これだけ各国が注目していれば労務費も今後急騰するだろう。そこには賄賂も汚職もある。それに、強力な軍部が健在だから、民主化が定着した訳ではない。

  ミャンマーでは1988年から2011年12月31日まで中国によるミャンマーへの直接投資総金額は139億4715万ドルで、日本がミャンマーへの直接投資総金額は2億1190万ドルだ。投資金額は中国と66倍ぐらいの差がある。それと工場の設立には人件費だけでは判断出来ない。ベトナムですら物流システムに問題がある。このミャンマーと中国との歴史も我々は認識しておく必要がありそうだ。


海野 恵一

海野 恵一
http://www.swingby.jp/

スウィングバイ2020株式会社 代表取締役社長
■職歴
2001年 アクセンチュア 代表取締役 
2004年 同社 顧問(2005年3月 退任)
2004年 スウィングバイ2020株式会社 代表取締役
2007年 大連市星海友誼賞受賞
■主な社外活動
日本青年会議所  日中友好の会  特別顧問
環境を考える経済人の会21事務局 事務局員

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著書


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