誰が腐敗をつくるのか?中国共産党腐敗の実像-2013「両会」に思う


”緊迫した空気”を身にまとう北京


  北京で「両会」が開催されています。「両会」というのは、「全国人民代表大会」と「中国人民政治協商会議」を合わせた略称です。

  両会開催中、北京の街角や地下鉄の駅はさまざまな職場から派遣された治安要員で溢れかえります。わたしは先週、ある駅のプラットホームで、わずか30メートルくらいの間に15人も赤い腕章を付けた若者がブラブラしていたのを見て、思わず笑ってしまいました。この期間は、とにかくみんなで”緊迫した空気”を醸し出そうとするのです。

  人間の社会というものは、とても面白いものです。なにかの儀式を行うとき、発動者(=企む人)は大概ちゃんといるのでしょうが、周りの人たちが一緒になって”雰囲気づくり”に励みます。

  若い頃、わたしは仕事柄、首脳級の人の通訳を幾度かしたことがあります。そういう時に発見したのですが、エライ人(=国家を代表する人、または、大企業を代表する人)が登場する時、必ず、取り巻きの人たちが、まるで働き蜂かなにかのように、せっせせっせと”緊迫した空気”を用意する。すると緊張感がみるまに伝染し、まるで、コチコチにならないとエライ人に失礼であるかのような場の雰囲気が作られていくのです。


日本で常に報道される「中国共産党の腐敗」は実際とは異なる


  中国では、習近平氏が共産党トップ、すなわち中国の天上人となってから、贅沢禁止令が発令されています。その効果たるや大変なもので、いまや「茅台(マオタイ)」や「五粮液」といった超高級酒メーカーが、ちょっと大袈裟に言えば”存亡の淵”に立たされるぐらいの状況になっております。

  ちょっと前までは、公款(公金)で飲む酒は茅台以外なかったと、わたしの親しい友人は笑っていました。この凄まじい、あっという間の180度大転換は、まさに、中国が「人治の国」であることを示しています。

  贅沢禁止令が発令された理由は、誰にでもわかる簡単なものです。庶民が急速な物価高に苦しんでいるのに、一本3,000元も4,000元もする-公金での飲み食いなら、もっと滅茶苦茶な値段のものも平気で胃袋に入れてきたことでしょう-茅台を役人や国有企業の人たちが呑みまくっていたのでは、”人民に服務する”が建前の執政党として示しが付かないから、であります。

  わたしの周りには、実にさまざまな階層、立場の友人たちがいます。共産党員もいますし、党員ではないけれど「両会」代表になっている人もいます。党組織で責任のある地位に就いている人もいますが、ヒラの、”腐敗”とはまるで縁のないマジメ一本の党員もいます。そして、もちろん多くの普通の人たち、がいます。

  長年かれらと付き合ってきて、わたしには、一つの事が分かってきました。

  日本では常に「唯一の執政党たる中国共産党の腐敗」が報道されるのですが、実際には責任あるポストに就いている党員は、そのポストを利用して甘い汁を吸おうとする大変な数の”シロアリども”によってたかられているのです。

  彼、または彼女の”官-すなわち権力-の大小”に応じて、さまざまな、それなりの階層の人びとが其処に群がり、なにがなんでも贈り物を送りつけます。

  わたしのある知人は穀倉地帯を統括する某部門にいます。そうすると、もう大変な量の山海珍味が自宅に届けられてしまう。あんまり凄い量なので、当然自分の家だけでは消費できない。そこで腐らせるのも何なので、親類縁者友人たちにこれまた大量の御裾分けがいく。最後に喜ぶのは蘇寧電器など、大手家電量販店です。一般の冷蔵庫には収まりきれないので、関係者が大型冷凍庫を買いに走るからです。


「全民的腐敗構造」が出来上がっている今の中国


  口では共産党を罵るのに、自分の利になると見るやたちまち”官”に擦り寄る人が非常に多いのです。

  あの連中(=共産党幹部)はいつも公金で飲み食いして真にケシカランと、口角泡を飛ばして「批判」するのに、自分がそういう立場-公金なり、他人の金で飲み食いできる立場-になると、これを逃す手はないと、大して腹も減ってないのにアワビやイセエビ、ナマコ-非常に高価な食材とされている-の類を片っ端から注文する人がいます。(そういう人は、それなりの地位に就いた知識人であることが多い)

  要するに、エライ人を奉り、エライ人を畏れ敬う空気を作り出すのは「取り巻き」だし、腐敗役人や腐敗幹部に取り付いて、その権力を最大限利用し、その権力を自分の蓄財リソースにしよう、いや、そこまで行かずとも、せいぜいタダで旨いものをたらふく食べたいと目論むのが、普段「共産党」を罵倒する数多の人びとの”実像”だと思います。

  日本のマスコミも、海外のマスコミも、「両会」報道に精力を注いでいますが、わたしはあんまりその中にみるべきものはないと思っています。いまの中国の体制は、中国共産党、そしてその頂点たる「中国共産党中央政治局常務委員会」が三権(=行政・立法・司法)の上に君臨する体制なのです。全人代も、政協も、憚りながら言わせてもらえば単なる”形式”、に過ぎません。

  各階層で、”官”をめぐる、”官”にたかる、「全民的腐敗構造」が出来上がっているのが今の中国であって、その癒着構造は、決して、抽象的な議論や、表面的な改革でなんとかなるようなものではないというのが、わたしの基本的な見方なのです。


薄田 雅人

薄田 雅人
http://www.cjworks.net/

株式会社フェイス 執行役員
1960年鎌倉生まれ。成蹊大学在学中に現代中国学者の加々美光行師と出会う。同校卒業後、アジア経済研究所調査研究部にて中国語研修受講。その後国費留学生として上海復旦大学中文系に留学。帰国後、日本国際貿易促進協会で理事長秘書、金融投資協力部、投資推進チーム課長等歴任。1997年に海外投資経営コンサルタントとして独立。中国滞在年数は上海、大連、北京で10年余。数々の直接投資案件を成功させてきた。2004年から国産パッケージソフトウェア(字幕制作ソフトウェア、字幕ソリューション)の国際展開に携わり、現地法人総経理として中国市場開拓の最前線に。CCTV(中国中央電視台)、中国電影集団等、中国業界最大手企業への納入を成功させた。著書に『中国で勝つ-鳴動する13億巨大市場攻略の条件』など。

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