「王老吉」に見る 弱さを見せて消費者の同情を誘う宣伝戦略


  「王老吉」という清涼茶飲料は、広州薬業集団が所持したブランドである。1995年、加多宝集団の親会社香港鴻道集団は広州薬業集団と提携して、「王老吉」の生産経営権を獲得した。使用権の期限は2010年まで。

  2001年から2003年にかけて香港鴻道集団の董事長(会長)の陳鴻道氏は使用権の継続を求めて3回わたって広州薬業集団の副董事長に300万香港ドルを賄賂し、継続契約を手に入った。

  賄賂の不祥事をバレた後、広州薬業集団がその継続契約の不法性を主張、2012年5月中国国際経済貿易仲裁委員会から「契約無効」と裁決された。加多宝集団が「王老吉」ブランドの使用停止を命じられた。「王老吉」がその時点でのブランド価値は1080.15億元と言われた。

  10数年をかけて、「王老吉」ブランドを清涼茶飲料のトップの座にまで育ってきた加多宝集団の葛藤と動揺が想像つくものだった。「王老吉」ブランドを返した後、加多宝集団が「加多宝涼茶」を世に送り出したが、市場の知名度が低いため、あらゆる広告では「加多宝涼茶」は昔の「王老吉」涼茶であることを宣伝した。この曖昧な宣伝手法では消費者に市場がふたつの「王老吉」が存在すると勘違いさせ、再び裁判で差し止めになった。

  そこで加多宝集団は新浪WEIBOで4枚のポスターを発表した。



≪すまん!我々が愚か者だ。17年をかけて中国ブランドの清涼茶飲料の中で唯一コカコーラに対抗できるようになったが≫



≪すまん!我々が自分勝手だ。6年連続販売シェアトップだが、競争ライバルの工場建設、販売ルートの構築に力を貸してやらなかった≫



≪すまん!我々が草の根出身だ。正真正銘の民営企業だが≫



≪すまん!我々が無能だ。清涼茶飲料を売るプロだけど、裁判に苦手≫


  ここで裁判の議論を敢えてしないが、マーケティングだけの視点から考えると、これは正に弱みを逆手に取った宣伝戦略である。

  マーケティング活動において、自社の商品がいかにライバルの商品より優れたことをアピールするのは一般的である。しかし消費者から見ればどの商品でも似たような品質、コンセプトで宣伝されるから、面白みもなくなかなか記憶に残らないだろう。

  「加多宝涼茶」のこの宣伝ポスターは一見自分の弱みを晒すようにみえるが、大手国有企業の広州薬業集団にいじめられる民営企業の役をうまく演じて、消費者の同情を誘う狙いであろう。


林 剛

林 剛
http://jp-vision.jp/

株式会社ジェーピービジョン 代表取締役
中国出身。来日12年。宮崎産業経営大学を卒業後、建設会社、商社を経て、2011年に株式会社ジェーピービジョンを設立、代表取締役就任。現在日本の中小企業に向けて中国調達・中国進出事業をサポートさせて頂いております。日本のことを積極的に中国に発信、中国のことを正しく日本に伝えることが自分の使命だと思います。 

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