インドの現場から。今、本当に中国以外のアジアへ行く時か?


インドへ行っての率直な感想『あと10年掛かる』


  昨年の秋口、ご縁がありインドのモータースポーツに参加した。10月下旬から始まり2月に終了するシリーズ戦の為、現在も続いており来月中旬でようやく終了。もちろんその間、マカオ⇔インド通勤中です。

≪英国・南米・日本・インドから若いヤングドライバーが終結してスタートしたMRF Challenge。すでにF1テスト経験者が4名もいると言うハイレベルな戦いだった。≫



  尖閣諸島問題以降、中国を離れて他の新興国への移転が加速と言う報道が目に付くが、実際のところはどうなのでしょうか?たしかインドもその候補地だったと思うのですが…

  そして実際にインドへ行っての率直な感想。『いやいや、まだまだ。。。あと10年掛かるわ』と言う印象でした。中国の経験が長い方でしたら『1995年の中国沿岸部より少し遅れた感じ』と言ったら感覚的に掴めますか?

製造業では嬉しい悲鳴


  “まだまだ時間が掛かり”、”まだまだインフラ整備が当面は必要な状況”、と言うのが見て取れ、ここが市場になるのは数年先の話しと思われる。しかしこれが製造業となるとちょっと様子が異なる。

  今回、我々が参加しているレースは”MRF Challenge”。MRFはインド最大のゴムメーカーで、チェンナイ(旧マドラス)で誕生し最初は子供向けの風船の製造から始まり、現在はインドでシェアNo.1のタイヤメーカーとなった。(現在の社名は“マドラス・ラバーズ・ファクトリー”から頭文字を取りMRFと表記)

  このMRF社のCEOの知己を得る事ができ、現在では頻繁に様々なビジネスの可能性を話し合っております。

≪MRF経営陣とインド人F1ドライバー ナレイン・カーテケヤン≫



  私はあるタイミングで質問を投げかけた。

「(タイヤの)輸出はしないのですか?」

  CEOは言う。

「今はインド国内が手一杯で輸出までは手が回らない。それよりもどこか我が社のタイヤを製造してくれる工場はありませんか?」

  何とも羨ましい限りの話しである。我が祖国、日本の報道を見ると毎年工場あるいは生産ラインの縮小、雇用の縮小がニュースになっている。翻って中国も微妙な状態にある。今まで日本で作り中国へ輸出していたタイヤ等はほぼ、中国生産へとシフトしてしまっている。しかし中国の人件費の高騰はこの10年で最低でも五倍以上になっている。中国の企業でさえ、他のアジア諸国へ移転しているのが実情だ。

  そう考えるとこちらもそのうち微妙な段階に入るだろうと思う。“国内で手一杯で工場が足りない”と言うのは、製造業を営む方々にとっては常にそうありたいと願っている状況ではないか?それが現実にこの地で起きている。

  そしてまだまだ本格的なモーターリゼーションは起きていない。これで今の中国の様な市場になったら一体、どうなるのか?現在のシェア争いは、地元の有名自動車メーカーであるTATA V.S.日本が誇る軽のスズキ(現地名マルチスズキ)である。

≪中国での自動車販売競争の覇者Audiはすでにこのインド攻略を展開している。『今は売れなくても良い』と言う堂々たるプロモーション。インドのポテンシャルマーケットにR8と言う最高峰の商品を見せ付ける事でインプリンティングをしている。≫



  しかしここにもドイツの雄、中国を制覇したと言っても過言ではないVW-Audi Gr.が虎視眈々と狙っている。まだ小さな4ドアで十分なこの地に、Audi R8等を持込んで富裕層向けにプロモーションを展開している。そしてより現実味のあるVW POLOを使用したワンメイクレースPOLO Cupを既に開催している。

≪常に新興市場に鋭く攻め入るVW-AUDI Gr.。そこには『この市場で勝つ』と言う意気込みを強く感じる。≫



  日本のメーカーもすでに一昨年からこのワンメイクプロモーションレースを企画している情報は入っていた。しかし残念ながら大きなミステイクを起こしている。そして案の定、初イベントは見事に失敗して現在、休止中。また中国の二の舞か?と、感じさせる展開になっている。


「チャイナリスク」は改革開放を勘違いした我々のミステイク


  当社は昨年、このシリーズへの参加をきっかけに考え方を変えた。“脱・中国”から発展して”脱・中国/含む・中国”である。

  すでにマカオに移転した段階で中国を少し抜けた状態にしていた。これはチャイナリスクを最大限回避し、尚且つ中国に根付く為の最大のディフェンスを含めた体制だった。しかしさらに踏み込んでインドまでを視野に入れながら中国も考えていくとむしろ大きな広がりと膨らみを感じる。日本の製造業も、今一度、鳥の目(俯瞰の目)を持って、地図と睨めっこするのも新たな展開を紐解く足掛かりを掴む第一歩かも知れない。

  このイベントに参加して随所にアジアを感じさせないスムーズな運営があった。なぜ?と質問した。彼らはこう答えた。

「だってここは元々資本主義の国だから」

  そう言われるまで意識していなかったが、言われてみるとなるほどそうだと感じた。

  そうなると、チャイナリスクとして感じていた様々な問題は、むしろ改革開放を勘違いして受け止めていた我々のミステイクではないか?と、思われてくる。そう、中国は市場経済を行う、社会主義国だった。その事を、もう一度意識しながら今後の展開を考えた方が良さそうだ。

  では結論を言おう。中国を脱出して他のアジア諸国に行くべきか?

  製造業にとっては非常に良い投資となるだろう。しかし、市場での販売を考えない方が良い。そこで商売をするのであれば95年当時の中国を思い出しながらやっていくしか無いだろう。市場にはまだまだ遠い。

  『じゃあ、ここで製造したものを中国で売れば良い。』それにはこう答える。「おいおい、忘れたのかい?中国の関税が何パーセントなのかを。」

  さて、私たちのチームは?はい、しっかりと日の丸をインドの空に掲げてきました。


澤野 勝治

澤野 勝治
https://www.k2s.asia/

1996年、中国初のレーシングコース 広東省珠海国際サーキットのオープニングを 皮切りに中国モータースポーツに深く関わる。2008年より上海に移転し台湾資本の企業でビジネスプラ ンニングを担当。北京VW、一汽豊田のプロモーションの企画立案を行う。2010年、結婚を機にマカオへ移住。日系マカオ人の妻と共にビジネスサポート・貿易業であるK2S HOLDINGS LTD.とレーシングサービスカンパニーである金狼賽車有限公司【Gold Wolf Racing Ltd.】を設立。 2012年度よりインドへも進出。インドモータースポーツに初めて参加した日系モータースポーツカンパニーとなった。2013年度より中国本土・香港・マカオ・フィリピン・インドのPUMAモータースポーツギアの総代理店となる。そしてこの夏から上海へも再進出を果たし、業務の幅が広い実業公司として上海駿雄貿易有限公司を設立し総経理に就任。一般ビジネスではマカオ大学や政府・行政機関の通訳・翻訳や現地弁護士事務所の日系企業向けの作業を担当。ロジスティックから小型家電製品開発まで幅広い企業活動を展開中。
尚美音楽学院 電子オルガン科中退と言う変りダネ。

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