タイで「最低賃金引き上げ」実施。日系企業への影響は如何に?


2013年1月1日より全国最低賃金を300バーツ(約870円)に引き上げ


  好景気が続いているタイランド。以前からタイは東南アジアで最も日系企業が進出している国ではありましたが、昨年の中国における反日運動の影響あり、日系企業の進出先として更なる注目を集めています。

  そうした中、ついに2013年1月1日より最低賃金が全国的に300バーツ(約870円)に引き上げられました。これは2001年から2006年まで首相としてタイを率いてきたタクシン氏の妹である、インラック首相(2011年より現職)が選挙公約に掲げていた政策です。

  兄であるタクシン氏の政策は国民皆保険の導入や30バーツ(約87円)診療(約87円で誰でも病院に行ける制度)、地方への補助金、助成金などポピュリズムと称されるものが多く、地方の農民から大きな支持を得ていました。インラック首相もこの流れをくみ、地方在住者の賃金向上(による支持拡大)を狙ってこの政策を打ち出したと言われています。

  当初の予定では昨年2012年1月より実施される事となっていたものの、2011年11月の洪水の影響や産業界からの反発を受けて全国的な実施は1年間延期されていました。既に一部の地域、バンコク及び周辺の6つの県(パトゥムタニ、ノンタブリ、サムットサコン、ナコンパトム、サムットプラカン、南部プーケット)では2012年4月より最低賃金が300バーツに引き上げられています。

  その他の地域では昨年4月の時点での300バーツへの引き上げはいったん見送られ、まずは各地域ごとに当時設定されていた最低賃金の40%引き上げを同時期に実施、そして2013年1月に全地域で300バーツに引き上げるという二段階の実施となりました。

2011年 2012年4月~ 2013年1月~
チェンマイ(北部、主要観光地。精密工場あり) 180THB 251THB 300THB
ラヨーン(バンコクより180km、自動車工場が集積) 189THB 264THB 300THB


今後の日系企業への影響は?


  こうした賃金引き上げは労働集約的な製造業への影響が最も大きく、ジェトロが昨年3月に行った日系企業への調査においても営業利益に「マイナスに影響する」と回答した製造業企業は94.3%に上り、営業利益減少率は回答した企業の平均で15.2%となっています。

  日系企業が予定している対応策としては「効率化・自動化投資の実施」「人員の削減」「販売価格への転嫁」などの回答が挙げられています。一部では「日本人駐在員の削減」という回答も10%近くみられ、今後は経営の現地化が促進されるという流れも出てくるかもしれません。

  好景気や圧倒的な人材不足(失業率が0.6%と世界的に見ても非常に低い状況)の中でただでさえ工場では人材確保に苦労していて、中には非合法的にミャンマー人の労働者をあっせんする業者も出てきているほどです。こうした労働力不足に追い打ちをかけるように、最低賃金の引き上げが実施されてしまったので製造業の経営者にとっては非常に頭の痛い問題となっています。

  一方で、バンコクを中心として展開している日系の非製造業(商社、金融、IT、サービスなど)においては最低賃金で雇用している社員が運転手やメイド、デリバリースタッフなど非常に少ないことから、昨年4月に既に最低賃金が300バーツに引き上げられたものの殆ど影響は受けていないようです。

  実際に筆者の周囲から最低賃金の引き上げに関する話はあまり聞こえず、それよりもインフレや圧倒的な人材不足の中での人材獲得のための賃金上昇競争などで影響を受けている、という意見が多数となっています。

  政府は今回の最低賃金引き上げと同時に法人税の引き下げを実施するなど必ずしも企業にとってデメリットになるばかりではない、と強調しています。

  実際に最低賃金の引き上げが決定した後も、日系企業(製造業、非製造業ともに)のタイ進出は後を絶ちません。インドネシアやミャンマーなど、ここ数年で注目されている市場と比べると賃金が高い国ではありますがインフラなども含めた総合的な観点では、投資先としてのタイの魅力はまだ健在のようです。


高藤 悠子

高藤 悠子
http://probity-gs.com

プロビティ・グローバルサーチ株式会社 代表取締役
2004年から2012年までタイのバンコク在住、大手日系人材紹介会社執行役員として勤務。2012年独立し、優秀な海外ビジネス経験者に特化した人材紹介会社を設立。

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海外での経験を元に「海外事業を`収益の柱'とするための人材紹介」を展開。
紹介した人材の社長就任事例は国内外、上場企業を含む複数の企業で有り。


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著書
【論文】タイにおける日本人現地採用人材の実態(バンコク商工会議所 所報 2011年5月号)


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