中国に出向者を出しているだけで、親会社が中国で課税される?


  日本の親会社が中国の子会社に出向者を出している場合、この事実のみを持って中国国内にPEが存在するとはいえません。しかし、最近の中国の課税の強化の傾向から、海外の親会社からの出向者も税務調査の対象とされ、PEとして認定されているケースが増え始めています。では、中国税務当局が出向者をPEとして認定する法的根拠は日中租税条約の第5条第5項の項目です。

【日中租税条約第5条第5項】

  一方の締約国(日本)の企業が他方の締約国(中国)において使用人その他の職員を通じてコンサルタントの役務を提供する場合には、このような活動が単一の工事(プロジェクト)又は複数の工事(プロジェクト)について12か月の間に合計6ヵ月を超える期間行われる時に限り、当該企業は、当該他方の締約国(中国)内に「恒久的施設」を有するものとされる。

  わかりやすくいいかえると、「日本の会社の従業員が中国国内においてコンサルタント業務を提供している場合において、その業務(プロジェクト)について1年間の間に6ヵ月超の期間にわたって行われているときは、中国国内にPEを有していると認定する」ということです。

  つまり出張か出向かは別にして、日本の親会社の社員が中国の子会社でコンサルタントの役務の提供を、6ヵ月超行っていると日本の親会社のPEが中国にあるとみなされ、日本の親会社が中国で課税されるということです。

  出向者がPE認定を受けないために、どこに気をつけたらよいか、この点について、2010年7月に出された国税発[2010]75号第5条に下記のような通達が出ております。

(1)     親会社のPEと認定されない場合
  親会社が子会社の要求に応じて子会社の業務のために子会社へ派遣した人員の雇用主は子会社であり、子会社はその業務について支配権を有し、親会社ではなく、子会社がそのリスクと責任を負う。この場合には、これらの派遣者の活動は、親会社の子会社所在国における恒久的施設とはならない。

(2)     親会社のPEと認定される場合
  親会社が自社の業務のために子会社に人員を派遣している場合において、以下の基準のいずれかに合致すれば、これらの派遣者が親会社のために勤務していると認定することができる。

イ)    親会社が派遣者の業務について支配権を有し、かつ、そのリスクと責任を負っている。

ロ)    子会社への派遣者の人数及び基準は親会社により決定される。

ハ)    派遣者の給与は親会社が負担する

ニ)    親会社は、子会社への派遣者の活動により子会社から利益を獲得する

  ここで注意すべき点は、PEと認定される場合の条件ですが、各基準の「全てに」合致する場合ではなく、「いずれかに」合致する場合は、PE認定される可能性があるということです。

  PE認定課税を防ぐために、出向者を出す際に、親子間で出向契約書を作成して、その契約書に現地での業務内容、出向の基準や期間、給与や税額、各種手当の負担などの取り扱いを明記し、人員の派遣はコンサルタントの役務の提供ではなく、あくまでも単なる出向であることを示す必要があります。


小嶋 大志

小嶋 大志
http://www.kojimaz.jp/

小嶋税務会計事務所 代表 税理士 
一橋大学商学部卒業後、丸紅株式会社にて中国を中心とした貿易業務に従事。その後、西山会計事務所にて法人・個人の決算申告、相続税申告、株式の評価など担当。みらいコンサルティング株式会社・税理士法人みらいコンサルティング(旧中央青山PwCコンサルティング株式会社)国際ビジネス部部長を経て2010年1月より現職。
【執筆実績】2009年11月「外国人の雇用・研修における課税関係」日中経協ジャーナル/他2006年より多数。 【講演実績】2009年12月 「中国税制の概要および中国子会社との課税問題」主催:SMBCコンサルティング 開催地:東京・大阪/他2007年から30回以上

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