尖閣問題、中国撤退コストは通常の3倍超の場合も、その裏側は…


  中国の日系企業の一部に撤退の動きが出ています。特に生産拠点として展開している所にとっては、人件費の高騰やストライキなどのリスクを抱えている所に持ってきての、暴力的なデモ。更に、その後の日本製品の不買運動等で生産量を余儀なくされるという事情が重なれば、撤退も検討せざるを得ないのは自然な話ではあります。

  そうは言っても、撤退は簡単では有りませんし、予想を超えた苦労があることも事実です。やはり総合的に判断する事が大切です。

  私自身、今まで数社の閉鎖処理に携わって来ましたが、処理自体が相当に大変であることは事実です。独資の場合は未だ良いのですが合弁は本当に大変、更に今回のケースは微妙な問題も見え隠れします。中国当局側も、片方で、日本企業は出ていけと言わせながら、実際に撤退を申し入れれば合弁先も当局も簡単には了解しないと言う事が起こっています。

  また、こう言う場合には彼らはものすごくタフネゴシエターになってしまいます。何せ、撤退の成否の権限を持っているので強気、引くことを考えません。如何に自分達の利益を最大化するか、そちらにフォーカスが移ります。税金などの追加徴収などを含め嫌がらせとも思える様なことが更に続くことも覚悟しないとなりません。

  また、仮に撤退を認めるにしても、中国当局としては、自分達に批判が向かうのだけは絶対に避けなければなりません。何も手を打たずに、政府方針決定→強攻策→デモの扇動→反日行動→日系企業撤退→解雇→失職という道筋をたどれば、労働者の不満は一途に政府に向かいます。個々の中国人にとって島は遠い話(実態の生活には関係して来ませんから)。

  政府の方針通りにやっていたら職を失い、食うことができなくなった、対して政治家やお偉いさんは相も変わらず良い生活となれば、どうしてくれるんだと言う話になり、それが拡大すれば共産党独裁政治の否定に向かいます。

  こういう場合に彼らが取る手法は5つ(エリアや相手によって対応は変わりますし、ここからお伝えするケースも基本的なパターンに過ぎません)


(1)撤退させない

(2)中国側投資者に日本持ち分を買わせ継続する(可能なら)

(3)中国企業による買収

(4)経済保証金の大幅増額を前提とした撤退承認

(5) (4)をさせた上で撤退承認をしない(完全に嫌がらせですが宙ぶらりんになります)


  そういう選択肢の中で、まずは、イレギュラーに高い経済保証金(退職金ですね)を要求する(させる)のが常套手段。撤退の場合、社員の解雇については当局への事前の届け出が必要だし、次の就職先も面倒を見ないとなりません。彼らが要求するような割の良い仕事などそうそう有りませんし、当局が応援してくれるなら強気一辺倒で行けます。個々の不満を避けスムーズに撤退したいという日系企業側の希望からも、結局はお金で解決する事になります。

  当然、最終的には当局の撤退認可が必要であり、当局との交渉も避けては通れません。ここでの承認をもらうのも至難の技、税務当局の調査だとか様々な処理が要求され、撤退まで1年を超える事も珍しく有りません。

  法外な経済補償金も本来のルール外ですが、それでものまないと撤退承認がもらえません。逆に、それではコストが掛かりすぎると日系企業が撤退を思いとどまれば、それはそれで良しやと言う側面も有ります(その企業の現地での価値や、当該エリア当局の考え方次第でしょう)。

  また、仮にそれでも撤退するとなったとしても、労働者側で、日系企業からは通常の3倍以上の経済補償金を得られるとすれば、彼らの不満は政府には向かいにくい。しかも、それを当局が後押しをしてくれるとなれば、彼らにとっては味方になります。結果的に政府に不満が向かうという、1番向かって欲しくない方向は避けられる事になります。

  また、合弁先に引き取ってもらえたり、中国企業に売れたりすれば経済補償金などの問題は避けることができるかも知れませんが、今度は技術流出や別のリスクも発生します。

  こういう背景を踏まえた時に、撤退は非常に大変で、相当なコストと期間が掛かります。撤退が良いのか、縮小が良いのか、継続が良いのか、現状と今後の的確な予想と合わせ、実質の撤退リスクも踏まえて合理的に判断してゆくことが求められます。撤退も選択肢ではありますが、くれぐれも安易に結論を出さないようにお願いしたい所です。


福田 完次

福田 完次
http://www.glabpot.com

(株)グラブポット代表取締役・久良豊(上海)人材服務有限公司・久良豊(大連)諮詢有限公司 CEO。ブログ日中ビジネスすごろく道中記(http://ameblo.jp/cjgarf/)にて中国ノウハウを毎日発信中。中国ビジネスコンサルティングとグローバル人材の紹介事業を営む。技術者派遣最大手の(株)メイテックにて14年間取締役。中国ビジネスは2002年から、事業モデル策定から法人設立、市政府折衝まで全てを管掌。2004年には大連市高新街園区の顧問に就任。現地法人設立エリアは、上海、杭州、大連、広州、西安、成都、北京。今までに設立した法人数は20社余り。大連市、西安市の市政府幹部とも交流を続けており、中国内での多数の人脈を保有。沿岸部から内陸部まで、経営戦略立案から実運営まで全てを経験、中国のビジネス特性と広範囲なエリア特性についても熟知している。

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