中国市場で確実なのは「BtoG」だけ


  中国経済の変調が連日伝えられています。1兆元規模の公共投資が決まったところですが、要するに輸出産業-とくに労働集約業種-が青息吐息の状態なのです。

  リーマン・ショック後にも4兆元の大型景気刺激パッケージを繰り出し、なんとか乗り切ったわけですが、これはあくまでショック療法。そもそも地方政府の財政内容なんてだれにも-おそらく中国人民銀行行長にも-確かなところはわかりません。

  捨て置かれた内陸農村部や、医療、教育といった民生部門に巨大なフロンティアがあるというのは本当ですが、公共投資が繰り返される度、肥え太るのは地方党政幹部とインフラ関連業者(国有企業)なので、ただでさえ脆弱な「消費」は上がりようがないのです。

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  中国経済がこれまで、「投資」で伸びてきたのは本当です。しかし、その恩恵はあまりに公平を欠いて分配されてきた。それが見え見えなので、じっと耐え忍ぶ物言わぬ民だった一般の人びとも、最近では大いに騒ぎを起こす(これを中国では「群体性事件」という)ようになりました。

  いま大騒ぎになっている尖閣諸島をめぐる「領土紛争」ですが、中国政府はなんとか早く沈静化させたいと考えてきました。当初から、中国の報道は極めて抑制的なものだった。中国におけるマスコミの特殊な立場を考えれば、中国政府の考えは一目瞭然です。

  その理由は、こうした一般の人びとの不満が下手をするといつ反政府、反党の運動に転化するかわからないからです。そういう恐怖を、現在ベネフィットに与っている階層の人びとが皆抱いています。

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  わたしは毎月中国に出向き、友人たちと意見交換しています。彼らは、大学教授、弁護士、銀行家、国有企業に務めるビジネスマン、マスコミ関係者などですが、ほぼ、例外なくご子息をアメリカかカナダに留学させており、いまの中国の社会矛盾がひじょうに危険な水準にまで高まっていると強い危機感を持っています。

  こうした中で、いま苦労をしているのは民営企業の経営者たち、それも、これまでの改革開放政策の過程で一番スポットライトを当てられてきた華東、華南地域で、輸出志向型軽工業を営む人たちです。

  先日、わたしの旧い友人で、日本向けにキャラクター製品を製造、輸出してきた実業家と会食しましたが、コスト上昇が続くなか、従業員集めでも、資金繰りでも、本当に大変な様子でした。

  いっとき、華東、それも浙江省温州市あたりで、銀行から融資を受けられない中小企業家向けに法外な利子を取る高利貸が跋扈していると、ずいぶん騒がれたことがあります。

  それは、完全に事実であったようです。そして、わたしは、これまで声を大にして講演会などで話してきた「中国ビジネスでは、まずBtoGを目指してください」という自分の体験に基づくメッセージはかなり正しいと、改めて確信を抱いたのでした。

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  BtoGのG、とは言うまでもなく、GovernmentのG、であります。ですがGovernment(政府)にモノを売れ、というわけではなく、広義のG、つまり、国家組織とその周辺の事業単位、国有企業、あるいは其処に関わる階層をこそ目指せと、普段申し上げております。

  Gの中にほんとうに強力な人脈を築けたとき、実は、よく言われる「売掛金回収リスク」など、たちまち消し飛んでしまいます。おカネは、ちょっと語弊はありましょうが、いくらでも出てくるはずです。

  ”われわれのような中小企業では、とてもそんな大きな国有企業など相手にできない”、という声が聞こえてきそうですが、それも、完全な思い込みであり、誤りです。中国はコネ社会だ、と誰でも言いますが、その実質は中国人が個人利益と集団利益の関係軸を中国人なりの基準で明確に持っている、ということです。ですから、相手にすべきは某国有企業でも某国家機関でもなく、王某さんであり、張某さんなのであります。

  中国経済のエンジンは投資であり、その推進主体は、極めて排他的に国有企業です。その構図は、向こう十年間、少なくとも、現下の国家統治体制が続く限り変わりようがない。したがって、現下の情勢にあって間違いないビジネスターゲットはBtoGである。わたしは、そう断言してよいと思います。


薄田 雅人

薄田 雅人
http://www.cjworks.net/

株式会社フェイス 執行役員
1960年鎌倉生まれ。成蹊大学在学中に現代中国学者の加々美光行師と出会う。同校卒業後、アジア経済研究所調査研究部にて中国語研修受講。その後国費留学生として上海復旦大学中文系に留学。帰国後、日本国際貿易促進協会で理事長秘書、金融投資協力部、投資推進チーム課長等歴任。1997年に海外投資経営コンサルタントとして独立。中国滞在年数は上海、大連、北京で10年余。数々の直接投資案件を成功させてきた。2004年から国産パッケージソフトウェア(字幕制作ソフトウェア、字幕ソリューション)の国際展開に携わり、現地法人総経理として中国市場開拓の最前線に。CCTV(中国中央電視台)、中国電影集団等、中国業界最大手企業への納入を成功させた。著書に『中国で勝つ-鳴動する13億巨大市場攻略の条件』など。

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