チベット鉄道標高5072mで流れる音楽


中国現場コラムvol 91 チベット鉄道標高5,072mで流れる音楽

  ゴルムド駅で再度チベット鉄道に乗車した筆者が、軟臥の自席に戻ると、ゴルムド駅に到着と同時に、駅構内のトイレに駆けて行った友人が、ほっとした表情で座っていました。この友人は、結局、駅職員用の事務所棟トイレを借りて用を足したのでした。

友人:「何十分もの間、チベット鉄道車内トイレを利用できず、我慢を強いられた大勢の乗客が一度に押しかけたら、駅のトイレはどうせ全部使用中となり、空いていないと思った。だから、事務所棟に駆け込んだのだけど、1階は、1箇所は使用中、もう1箇所は故障中。2階に駆け上がるとようやく1箇所空いていたよ。客用のトイレに駆け込まなかった判断勝ちだね」

  ほっとしたのか、うれしそうに自己の思考過程を反芻しながら話していました。食堂車での朝食は断念したものの、昼食で食堂車を利用できることを楽しみにしている様子でした。

1.午前中はのんびりと~高山病に苦しむまで~

  チベット鉄道は、この路線の最高地点、標高5,072m(車内表示は「海抜5,079m」)に向かって走ります。標高5,072m地点は、11時40分に予約していた食堂車での昼食後に通過する予定でした。午前中のこの時点では、チベット族居住地域である雲南省シャングリア(標高3,400-4,100m)で高山病(高原反応)に苦しんだ筆者も、まだまだ元気でした。青海省西寧で購入し飲んでいた高山病に効くという薬(漢方)の効用かと、ニンマリしていたのでした。

  午前中、他の中国人グループ同様、カードゲームなどをしていると、昼食の時間になりました。食堂車に行くと、中国人(漢族)グループの男性が、高地にもかかわらず、白酒を飲みながら大声でご機嫌な声を上げていました。出て来た昼食は、料理が6種類、スープにご飯というなかなか豪華なものでした。1テーブル4人掛けで、1テーブル分で26人民元(日本円320円相当)という値段でした。魚の姿煮は、中国の他の地域同様、川魚であるため少々泥臭いものの、筆者にとっては食べられないものではありませんでした。中国居住経験者には、満足の行く味でした。

  昼食を終え、軟臥に戻ると、さらに高地に上がってきたため、気圧の影響を受け、ポテトチップスの袋が破裂しました。

2.最高地点、標高5,072m(車内表示は「海抜5,079m」)を走るチベット鉄道

「ピーピーピー」

  筆者が利用していた軟臥の前に設置されている警報機が壊れており、前夜から断続的に鳴り続けていました。放っておくと直してはくれないため、何度も車掌を呼びに行き、警報機を止めてもらっていました。しかし、何度止めてもらっても、なぜかしばらくすると警報機は鳴り始めるのでした。

  標高最高地点に近づくとアナウンスでもしてくれたり、写真撮影のためにゆっくり走ってくれたりするのかと思っていた筆者は、すぐにそういうサービスはないことに気付きました。電光掲示板でも、数度、「海抜5,079m」という数字が流れたきりでした。事前に調べつくして、電光掲示板の写真撮影を狙っていないことには撮影できないほどでした。

筆者:「チベット鉄道の海抜最高地点を通過しているのに、今流れている音楽って、中国らしくも、チベットらしくもないね!」

友人:「というか、これ沢田研二の「時の過ぎ行くままに」だよ。中国語で女の人が歌っているけど、絶対そうだよ!」

  チベット鉄道車内では、ずっと車内放送で音楽が流れていたり、青海省のヨーグルトの説明をしたりしていました。飛行機の中国国内線に乗ったことがある方はご存じでしょうが、中国国内線の一部会社では、見たい人、聞きたい人だけでなく、有無を言わさず、テレビの番組を見せられることになります。中国国内線とは異なり、寝台列車の軟臥内ではボリュームを絞ることはできたものの、すぐ前の廊下では音楽が流れ続けているのでした。

車内放送(中国人女性歌手):「我愛你~♪♪」

  沢田研二さんが悪いわけでは全くないのですが、中国自慢のチベット鉄道、しかも最高海抜地点で流れる音楽が「なぜ沢田研二?」という感は拭えませんでした。良く言えば、細かいことは気にしない、憎めない人々、「素敵」でした。良く言えば、漢族は「無邪気」だな、と感じることが多々ありました。

  チベットは標高も高く、水も少ない地域かと思っていたのですが、チベット鉄道から眺めるチベットの大地は湿地帯で、青々した箇所が多くありました。



※ チベット鉄道の食堂車で出された昼食

以 上


奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

公認内部監査人
1996年早稲田大学教育学部教育学科社会教育学専攻卒業、2001年早稲田大学大学院法学研究科民事法学専攻修了(法学修士)。2009年中国北京にある中国政法大学大学院に留学し民商法を研究すると同時に、中国現地各有名弁護士事務所にて中国法務・労務を中心とした実務研修を行う。
【著書】
◾︎『中国のビジネス実務 人事労務の現場ワザ Q&A100』(共著、第一法規、2010年)
◾︎『中国のビジネス実務 債権管理・保全・回収 Q&A100』(共著、第一法規、2010年)他。
【論文】
◾︎「中国で債権回収に手こずる~現場からみた注意点(合弁、独資別)~」(中央経済社『ビジネス法務 2011年10月号』)
◾︎「中国ビジネス 現場で役立つ実務Q&A」(第一法規『会社法務A2Z』2012年1月号より連載中)
◾︎「中国から”上手”に撤退する方法」(中央経済社『ビジネス法務 2013年6月号』)
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著書


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