ゴルムド駅での20分とチベット鉄道内のチベット人


中国現場コラムvol. 90 ゴルムド駅での20分とチベット鉄道内のチベット人

  軟臥でぐっすりと寝た筆者は、翌朝、昨夜同様の洗面所風景を横目に身支度をしていました。ゴルムド駅到着は7時30分予定でしたが、予約していた食堂車での朝食時間も同じく7時30分となっていました。牽引車(機関車)切り替えなどのための停車時間は、20分しかありませんでした。そこで、早めに食堂車で朝食を済ませ、すぐに外に飛び出し、先頭車両に接続される牽引車(機関車)の記念撮影をすることを計画していました。

1.       ゴルムド駅とトイレと食堂車

  ゴルムド駅が近づいたところで、一人の友人がそわそわし始めました。高山病(高原反応)の影響か、お腹の調子がおかしい、と言い出したのです。トイレに向かうとゴルムド駅に近づいたため、チベット鉄道車内のトイレ全てに鍵がかけられていたのです。しかも、到着のかなり前の段階から鍵がかけられました。

筆者:「山西省五台山から北京に帰る寝台列車でも、○○さんがトイレに行こうとしたら、鍵がかかっていて、北京駅到着準備中だから利用不可と冷たく言われたことがあった。下車後に構内でもトイレが見当たらず、駅近くの店に駆け込みセーフとなったことがあった」

友人1:「高山病の影響か我慢ができない・・・」

  高山病の影響の一つである、頻尿・頻便が始まっていました。

  友人は、車掌との交渉に再度向かいました。間もなく、苦悶の表情で戻ってきました。

友人1:「子供なら良いけど、大人は駄目、と言われた。見張っていてもらって結構だから行かせて、と言ったけど、冷たく断られた。ゴルムド駅の何番線に到着するかで、トイレが近いか遠いかは分からないけど、停車時間も短いし、到着ホームによっては間に合わないかもね、と冷たくあしらわれた」

  大変そうでした。幸いゴルムド駅には到着予定時間通りに到着しました。車両ドアが開くと同時に、友人は駆け出して行きました。筆者と別の友人は、食堂車へと急ぎました。1テーブル4人席に座りながら、チベット鉄道車内にある食堂車での初めての食事を楽しみました。

  筆者は中国中で、寝台車の食堂車を利用してきましたが、中には口に全く合わない(腐っているような味わいのものが出てくる)こともありました。しかしながら、チベット鉄道の食堂車の食事は、チベット料理でも何でもない漢族料理ではありましたが、中国生活経験者の口には合うものでした。小皿料理が8種類、ゆで卵、スープ、饅頭という組み合わせでした。

友人2:「日本からの旅行者の口に合うかどうかは分からないけど、結構おいしいね」

  一通り、食事をした後、牽引車(機関車)の写真撮影をすべく外に飛び出しました。標高4,100mの雲南省シャングリラでも高山病にならなかった友人は、自信満々、標高2,829mという高地にいることも気にせず、写真を構えながら走って行きました。筆者は、シャングリラでは高山病になり苦しんだ経験があったことから、自重し走ることはやめていました。すると、外にいた乗客はどんどんと車内に戻って行き、外には我々しかいなくなったことに気付きました。友人は、その状況には全く気付かず、どんどんと走って行ってしまいました。

車掌:「あなたたち!出発よ!早く戻って来なさい」

  筆者は目の前の車両に飛び乗りました。全速で戻ってきた友人も目の前の車両に飛び乗りました。我々が飛び乗ると同時に、ドアは閉まりました。危うく捨て置かれるところでした。軟臥の車両に戻る時間はなく、目の前の車両に飛び込むと、そこは硬座の車両でした。

2.       チベット鉄道の硬座のチベット人

  硬座の車両を通り、軟臥の車両へと向かいました。筆者が利用していた軟臥にいる乗客は、筆者たち以外は皆、漢族のようでした。一々聞いて回り見て回ったわけではありませんが、チベット族の乗客は、周りに一人も見当たりませんでした。それに対して、硬座には多くのチベット族の乗客がいました。

  硬座はベッドではなく、座席が倒れるわけでもない、通常の硬い座席です。中国の別の地域を走る寝台車以上に、高地を長時間かけて走るチベット鉄道の硬座に座りながらラサを目指すのは、過酷な旅です。標高が高く、日差しの強いチベットで日焼けしたチベット族の顔が並んでいました。値段の高い座席である軟臥と値段の安い座席である硬座には、乗客にも違いが見られました。

  硬座の車両にいる乗客は、食堂車を利用しませんし、できません。車内販売の弁当を購入して食べている人も少数です。多くの人は、値段の安いカップラーメンを食べています。お湯はただでもらえます。床は、ヒマワリの種などが散乱しており、汚いです。通路や車両間では人が辺りかまわずに寝ています。

  硬座の車両と軟臥の車両の間は鍵が掛かっていました。車掌が来て開けてくれるのを待つしかありませんでした。しばらく待っていると車掌が来たため、鍵を開けてもらいました。そのときに軟臥の(乗車後、チケットと交換で渡される)座席カードの確認を求められました。軟臥の座席カードを持っていない人は、たとえトイレの利用であっても、軟臥の車両に入ることは拒否されていました。



※ チベット鉄道の食堂車で出た朝食 

以 上


奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

公認内部監査人
1996年早稲田大学教育学部教育学科社会教育学専攻卒業、2001年早稲田大学大学院法学研究科民事法学専攻修了(法学修士)。2009年中国北京にある中国政法大学大学院に留学し民商法を研究すると同時に、中国現地各有名弁護士事務所にて中国法務・労務を中心とした実務研修を行う。
【著書】
◾︎『中国のビジネス実務 人事労務の現場ワザ Q&A100』(共著、第一法規、2010年)
◾︎『中国のビジネス実務 債権管理・保全・回収 Q&A100』(共著、第一法規、2010年)他。
【論文】
◾︎「中国で債権回収に手こずる~現場からみた注意点(合弁、独資別)~」(中央経済社『ビジネス法務 2011年10月号』)
◾︎「中国ビジネス 現場で役立つ実務Q&A」(第一法規『会社法務A2Z』2012年1月号より連載中)
◾︎「中国から”上手”に撤退する方法」(中央経済社『ビジネス法務 2013年6月号』)
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著書


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