チベット鉄道車内の洗面所で見てしまった驚きの光景


中国現場コラムvol. 89  チベット鉄道車内で出会ったおもしろおかしい出来事~洗面所での生態編~

  食堂車の予約を済ますと、間もなく消灯時間となります。そこで、筆者は、歯磨き、洗面等するため、チベット鉄道車内の洗面所に向かいました。

1.       チベット鉄道車内の洗面所は?

  歯ブラシと歯磨き粉を持って、洗面所に行きました。ここでも中国でのお約束通り、順番に並ぶということはなく、隙あらば我先にと洗面器を使うという状況でした。ここまでなら、何も驚くことはありません。ここからが、楽しい中国旅行の醍醐味です。

  チベット鉄道には、いろいろな種類の座席があり、またいろいろな人が乗っています。筆者が利用していた軟臥(1室4人の部屋、2段ベッドが左右に2台ある)は、寝台列車たるチベット鉄道の中では最高級の座席になります。青海省西寧からチベットのラサまでで、770人民元(日本円で9,600円相当)です。

  横になって寝ることもできますし、部屋にはドアも付いており、ドアを閉めることもできます。中国では、旧正月(春節)などに帰省する際、飛行機を利用できるのは一部の人です。飛行機はチケット代がどうしても割高だからです。そのため、一般的には若い女性でも一人で寝台列車に乗車します。若い女性の場合は、硬臥(1室6人の部屋、3段ベッドが左右に2台ある)を好みます。軟臥よりは劣るものの、ドアがないため、密室にはならないからです。

  この他に、ベッドの付いていない座席(硬座)で、チベットに向かう人も多くいます。チベット鉄道は、西寧からでもほぼ丸1日の行程となるうえ、北京からであれば、丸2日の行程となります。しかも、標高5,000m超の地域を走るため、硬座での移動は身体に過酷です。中には、硬座にも座る席を確保できなかったのか、それとも横になりたいのか、通路に転がっている人たちもいます。

  軟臥の車両と硬座の車両との間のドアは鍵が掛けられており、硬座にいる人たちは軟臥の車両には入って来られなくなっています。そのため、軟臥にいる人たちは、チベット鉄道の中で最も高いチケット代を支払って乗車していることが前提です(たとえば、現在、北京の1ヶ月あたりの最低賃金は1,260人民元)。

  筆者が歯を磨いていると、隣にいた男性は、洗面器の中に足を突っ込み、せっせと両足を洗っていました。さらに隣にいた女性も足を洗っており、最後にコップに注いだ水を床がびしょびしょになることも気にせず、ジャブジャブと足に掛け流していました。次に来た男性は、タンブラーの中のお茶の葉が洗面器に詰まることを気にもかけずに、洗面器に捨てていました。

  トイレももちろん、床はびしょびしょ。何度もつまり、いろいろな物体が溢れ返っていました。次の日、ゴルムド駅で一度、トイレの詰まりは修繕されたものの、またすぐに詰まっていました。ただでさえ、水の流れが弱く詰まりやすいところに色々な物を捨てるからでした。

  筆者は、比較的きれいなトイレを探して利用しましたが、鍵は閉まりませんでした。若い中国人カップルは、女性がトイレに行っている間、男性が見張りをしていました。友人はノーガードで用を足していると、お尻丸出しの状態であるにもかかわらず、ドアを開けられたと言っていました。中国人の知人の中には洋式で用を足すのを嫌がり、便器の上に靴で上って、それから用を足す、という人もいました。

2.       「やりたいようにやる」漢族と「恥」の概念

  自席に戻り、友人に洗面所やトイレでのことを話していると、一人の友人は、「今は少なくなった日本の夜行列車に学生時代から何度も乗車してきた。日本の夜行列車も、戦後の頃と比較すれば、今の中国と似たりよったりではないかな」と達観していました。

  別の友人は、「「神の存在」(キリスト・イスラムのような一神教であっても八百万の神のよう多神教であっても)を感じているか否かで「人間度」「民度」が変わってくるように思う。日本人・チベット人・西洋人は良くも悪くも神の存在を畏れ多いと思っており、

⇒ いつも誰かが見ている、

⇒ だからこそ、人としてあるべき姿を目指そう、

⇒ そうでないと幸福になれない、罰が当たる、

  という思考回路になるので、人間らしさを保てるが、漢族はそのような信仰がないので本能のままに行動するのでは?」という意見でした(ただ、この点については、ある友人が、日本での美術展を見に行ったとき、日本人の年配の方が順番に並ばず、列を守らない、と閉口していたことも印象的でした。

  他にも、中国人は弱者に優しく、公共の乗り物では必ず席を譲りますが、日本人は寝たふりをすることも多いため、中国人にも日本人にも、良いところもあれば悪いところもある、ということかも知れません)。

  確かに、漢族の友人たちと話していても、多くの人は無宗教です。儒教信者でもなければ、道教信者でもありません。ある意味、(クリスマスも祝えば、神社にも寺にも行く)多くの日本人のように何でもありの無宗教ではありますが、漢族は、「自分のやりたいことをやりたいようにやる」という場面が多く、日本人のように「恥」という概念は希薄に思う場面にしばしば出会います。

  日本人の言う「恥」の概念と、漢族が大事にする「面子」とは全く異なるように思うことに多々出会いますが、チベット鉄道車内での出来事一つを取ってみても、おもしろい経験が尽きないのが中国の現状です。



※  西寧出発時のチベット鉄道の牽引車

以 上


奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

公認内部監査人
1996年早稲田大学教育学部教育学科社会教育学専攻卒業、2001年早稲田大学大学院法学研究科民事法学専攻修了(法学修士)。2009年中国北京にある中国政法大学大学院に留学し民商法を研究すると同時に、中国現地各有名弁護士事務所にて中国法務・労務を中心とした実務研修を行う。
【著書】
◾︎『中国のビジネス実務 人事労務の現場ワザ Q&A100』(共著、第一法規、2010年)
◾︎『中国のビジネス実務 債権管理・保全・回収 Q&A100』(共著、第一法規、2010年)他。
【論文】
◾︎「中国で債権回収に手こずる~現場からみた注意点(合弁、独資別)~」(中央経済社『ビジネス法務 2011年10月号』)
◾︎「中国ビジネス 現場で役立つ実務Q&A」(第一法規『会社法務A2Z』2012年1月号より連載中)
◾︎「中国から”上手”に撤退する方法」(中央経済社『ビジネス法務 2013年6月号』)
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著書


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