日本語能力試験1級のホントの実力とは


  微妙に怪しい日本語5

  日本語を母語としない人々の日本語能力を測るためにもっとも普及している試験が、日本語能力試験といわれるもので、日本国内および世界の百近い主要都市で実施されている。そのほかにもBJTJ-TESTと呼ばれる試験があるが、受験者数では日本語能力試験が現段階では圧倒的に多い。

  平成22年に制度改正があり、最上位がN1、最も入門レベルがN5。ただしその前年までは1級~4級というランク付けだったので、履歴書には、「日本語能力試験1級合格」と書かれていることもまだまだ多いはずだ。いずれにしろ最上級はN1または1級である。

  さて、日本でオフィスワーカーとして働く外国人はまず間違いなく1級に合格している。中国にいて日本企業に応募してくる中国人社員や学生も、1級またはN1取得者が多い。しかしこれをもって「日本語できる!」と考えるのは、ビジネスレベルという意味では早計である。

  中国を初めとするいわゆる漢字圏の人々にとって、1級(N1)はあまり難しくないらしい。日本語の先生方のよると、漢字がわかれば(たとえ正しく読めないにしても)、問題文と解答の選択肢の意味もわかってしまうため、読解力が充分になくても正解できることも多いそうだ。実際、大学2~3年の中国人留学生と話してみると、「日本語1級?そんなの常識ですよ、常識。あれは簡単です。受かってないなんて信じられない」と言われる。

  では、1級に合格する日本語レベルとはどれくらいか。私の感覚になるが、もし英語のTOEICへ換算可能だとすると、1級はTOEIC600点くらいなものだ。つまり、ストレートに言うとたいしたレベルではない

  英語の求人であれば、日本人向けに「バイリンガルのお仕事」として紹介されるものはだいたいTOEIC750以上を要求している。社内の基準でも社員に海外(英語圏)赴任させるときの基準としても同程度だ。現にそうして赴任した人々ならわかると思うが、750では赴任してから苦労する。そもそも試験の点数と実用は別、と実感する人も多いはずだ。たとえ800、900とっていたにしても、実地で使えるかどうかなんて度胸次第である。

  TOEICで600程度でしかない日本語能力試験一級にスレスレで合格した人の日本語は問題大ありで、決して誇張しているのではなく、ビジネスレベルにはほど遠い。(誤解のないよう添えておくが、1級合格者がすべてTOEICの600点レベルと言っているのではない。合格レベルが600点相当だという意味である。合格者の中には、日本語を母国語と同じように使いこなせる人も大勢いる。)

  日本人の中には、履歴書に日本語能力試験1級となっているだけで、「さすが優秀だ」とか「日本語、問題ないね、この人」と判断してしまう人も少なからずいるが、その思い込みは捨てた方がいい。ビジネスレベルかどうかは全くの別問題だ。


井上 一幸

井上 一幸
http://www.asiastar.co.jp/

アジア人財カンパニー株式会社 代表取締役
昭和61年 開成高校卒業。平成2年 東京大学経済学部卒業。日本生命保険相互会社で約8年勤務ののち、海外留学、海外勤務。帰国後の外資系勤務を経て、平成14年から香港経済貿易代表部投資推進室室長。平成18年から現職。アジア人財オフィスワーカーの人材紹介と「ワンランク上の日本語」研修をスタート。TOEIC 980点(平成21年)、日本語教育能力検定試験 合格(平成21年)

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