「iPad事件」に学ぶ中国商標 属地主義とアップル側の課題


中国商標権問題を解決できないと立ち入り禁止

中国商標権問題が市場へのアクセスを困難に



  皆さんは、「属地主義」という言葉はご存知でしょうか?

  実は、国ごとで知的財産権の独自のルールを持っています。例えば、中国の商標権は、中国国内でしか使えません。もしも、ハイアールなど中国企業が、日本国内で、日本企業に対して、中国商標権で権利行使をしてきたら納得できませんよね。このため、知的財産権は、国ごとに独立していますし、基本的に国ごとに取得し、権利行使を行う必要があります。

属地主義で、中国商標は中国で使えますが、日本では使えません。逆に日本の商標権は、日本で使えますが、中国では使えません。

  さらに、商標法の観点からでは、中国は、中国大陸、台湾、マカオは、それぞれ別の国(領域)として扱われるという独自の問題があります。このため、アップルが仮に台湾の商標権を唯冠電子股份有限公司(Proview Electronics Co., Ltd.、以下「唯冠電子」若しくは「台北唯冠」と言います。)から購入したとしても、それは、中国大陸内で有効な中国商標権を入手したことにはなりません。

  

iPadの中国商標事件には、アップル側の課題


  アップルは、「唯冠電子」と中国の商標権を含めた世界中の商標権の譲渡契約を結んだと主張しています。 実は、中国の法令では、
 

登録商標を当事者間の協議により譲渡する場合には、譲渡人と譲受人は商標局に「登録商標譲渡申請書」を提出しなければならない。登録商標譲渡申請の手続きは譲受人により行う。商標局は認可した後、譲受人に相応の証明書を交付し、且つ公告する(中華人民共和国商標法実施条例 25条 JETRO訳)。


  と定められております。 このように、中国では、商標権を移転する場合には、商標局に手続が必要です(日本でも同様に特許庁に手続きが必要です)。つまり、当事者間の間で譲渡契約が結ばれたとしても、商標局に手続きをしないと商標権の移転は認められません。

  仮にアップルが言うように、「IP社」が「唯冠電子」と中国の商標権を含めて譲渡契約を結んだとすれば、iPadの中国商標権の移転手続きを行った後に、アップル社にiPadの中国商標権を譲渡していたはずです。現在、中国の商標出願件数や、中国商標の登録件数は、既に日本の商標出願件数や、商標登録件数を超えています。

  このため、中国商標権を持っているから、買わないかと持ちかけられるなど、日本企業が中国企業などから中国の商標権を購入するケースが増えることが予想されます。

  そもそも、交渉相手が真の商標権者か注意が必要ですし、中国でビジネスを行うのであれば、中国対象の中国商標権か精査する必要があります。さらに、仮に、中国企業と合意に至って、中国商標権の譲渡契約を結んだとしても、商標局への移転手続きが終了するまでは気を許さないことが重要です。

まとめ

  • 交渉相手が真の商標権者か確認する。
  • どこの国の権利か確認する。
  • 権利が移転されたか確認する。

  • お読み頂きありがとうございました。


    鈴木 康介

    鈴木 康介
    http://www.japanipsystem.com/

    プロシード国際特許商標事務所 代表 弁理士 (特定侵害訴訟代理権付記)
    日本弁理士会価値評価推進センター副センター長 日本弁理士会関東支部幹事
    1995年4月~1999年3月:東京理科大学基礎工学部生物工学科
    1999年4月~2001年3月:東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻
    2001年7月~2003年3月;アクセンチュア株式会社
    2003年4月~2008年8月:大手国際特許事務所、大手国際特許商標事務所
    2008年9月~現在:プロシード国際特許商標事務所

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    著書
    2012年 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 ・ 2月 知財羅針盤(発明2月号) 発明協会 2011年 ・12月 知財羅針盤(発明12月号) 発明協会 ・10月 知財羅針盤(発明10月号) 発明協会 ・ 8月 知財羅針盤(発明8月号) 発明協会 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 ・ 2月 知財羅針盤(発明2月号) 発明協会 2010年 ・12月 知財羅針盤(発明12月号) 発明協会 ・ 8月 知財羅針盤(発明8月号) 発明協会 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 5月 競争優位性又は企業価値と知財 会計・監査ジャーナル5月号 第一法規出版 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 2009年 ・10月 中国における商標実務(発明10月号)発明協会 2006年 ・9月 ソフトウェアエンジニアリング論文集80's~デマルコ・セレクション 翔泳社


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