「東京スカイツリー」の中国語訳は「東京天空樹」にあらず!?


 東京スカイツリーの中国語訳をご存じだろうか。公式サイトによれば「東京天空樹」だが、天空樹はあちらで商標登録されていた。ならばと、よりふさわしい表記を出願中という。開業まで100日、準備は胸突き八丁を迎えた。(2012年2月12日(日)朝日新聞「天声人語」より)

  またしても、やられた。「東京天空樹=東京スカイツリー」という名前が中国商人の手によって、中国大陸では先に商標登録をされてしまったのです。つい先日、3月17日より東武伊勢崎線の業平橋駅は「とうきょうスカイツリー駅」と名前を変えましたが、ローマ字・中国語・韓国語が併記されています。そこにあった中国語名は「東京晴空塔」。東武はこの名前で中国名を登録するほかなかったのです。

  こうした中国商人の“名前泥棒”は今に始まったことではありません。「青森」「博多」「加賀」「宇治」「近江」「山梨勝沼」といった地名だけでなく「信州味噌」「美濃焼」「宇治金時」「八海山」といった商品名まで中国では先に商標登録をされてしまっているといいます。「蜡笔小新(クレヨンしんちゃん)」が中国での裁判に、日本側が負けたというニュースも記憶に新しいと思います。

  「だから、中国人はよぉ~」なんて声が聞こえてきそうです。しかし、中国では「先願制」を採用してしまっていて、つまり「早い者勝ち」なのです。そして、この「先願制」は日本社会も採用しています。中国でも商標登録の際は日本でいうところの特許庁のような機関で審査が行われます。そして、以前はかなり長い時間を要した記憶があります。現に「青森」や「博多」は先に登録されてしまったわけですが、「東京」や「大阪」のような有名な都市名に関するトラブルは聞いたことがありません。「審査に時間をかけるんだったら、ちゃんと調べてくれよ~」とも思いますが・・・。

  私は上海時代、PCで勉強が可能なFLASHアニメの日本語教材『桜にほんご』を制作しました。私が何故『桜にほんご』という名前を選んだか?何てことはありません。アニメの主人公に“飛鳥桜”という名前を付けたからです。彼女はアンドロイドで、あらゆる人物に変身できる設定でした。普段は学生なのですが、時にはOL、時には看護士と、彼女を変身させることで、あらゆる場面のあらゆる人物設定での会話学習を可能にしたのです。

  さて、このアニメ教材を使用し、日本語を教える教室が困りました。中国全土に『桜』という名を冠した日本語教室はいくらでもあったからです。結局、教室の中国語登録名は『櫻花国際日語』に落ち着きました。『桜にほんご』のロゴはブランド、看板に今もそのまま使用されています。『桜にほんご』の看板は現在中国の20の都市(上海、北京、深圳、広州、大連、天津、蘇州、杭州、南京、無錫、寧波、南通、重慶、成都、青島、厦門)で見ることができます。

  つまり、“名前”の取り合いは中国国内において中国人同士でも行われていることなのです。“名前泥棒”にあったのは日本人だけではないのです。あるブランド名を持つ人が「中国で商売を始めよう」と思った場合、まず一番に気にしなければならないのは“名前”なのかもしれません。


丸尾 達

丸尾 達
http://www.chuseum.jp

JCI日中交流総研 代表
富士銀行時代、南京事務所開設準備に従事し、40を超える中国の都市を視察。同行退職後は南京大学修士課程に就学し、2003年修士学位取得。卒業後は上海を中心に日本語教育ビジネスを展開。『新編日語教程』(1~4巻、華東理工大学出版社)を出版した他、中国全土13都市に20校以上展開する日本語サロン『桜にほんご』のアニメーション教材を制作し、副校長に就任。この間、北京電資台『外国人中華才芸大賽』、中央電視台『朋友』、上海東方電視台『中日之橋』、南京電視台『市民論壇』はじめテレビ番組も多数出演。上海東方電視台の人気クイズ番組『Everyone Wins』では予選から勝ち抜いての出場としては外国人初の出演を達成。中国庶民の世界に入るべく努めた。
現在は「真剣に日中間の架け橋になりたいと考えている日本人、中国人の方のサポートができれば」と「中国」をキーワードとした人材紹介事業に携わる。2012年、京都商工会議所アジアビジネス相談デスクアドバイザー就任。

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著書
『中華民国史新論』(三聯出版社、小論文掲載) 『新編日語教程』第一版、第二版(1)~(4)(華東理工大学出版社)


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