中国政府、所得分配の構図を調整。最低賃金制度を呼びかけ


 9月22日の「光明日報」において発表された「2020年の中国所得分配構図に大きな変化」という文章が今、注目を集めています。

 「十二五計画」(第12回5ヵ年計画)の中で中国は、今後5ヵ年の所得政策の大きな方針として「低所得者の収入を引き上げ、高所得者の収入を抑制する」という内容を打ち出していますが、論文を発表した蘇海南の研究員によれば、 “低い者を引き上げ、高い者を抑制する”という政策に関して非常に困難な障害が存在すると考えているようです。彼が言うにはまず、高収入とは何か、どのように抑制するのか等について、今の時点ではまだ政府内でもコンセンサスがとれておらず、また地方政府や企業、業界団体等各方面から、内在する利害関係によって政策実行が極めて難しいと指摘しています。彼は更に、「不合理、不公平な既得権益に対する引き算は、足し算より困難が多い」とも語っています。

 中国のGDPはすでに世界第2位となり、国の税収も年々増え、一般国民の所得はある程度増加したものの、国の経済総量、財収の伸び幅から見れば、所得の増加はバランスの悪いものとなっており、特に賃金報酬がGDPにおける比率は依然として低いものになっています。中国の農村と都市との所得格差係数は、農村1に対し都市が3.3と、はるかに世界の平均水準(世界平均は農村1に対し、都市は2)よりも大きく上回っており、中国における業種の格差比は15倍にもなっており、特に国有企業の高級管理職の平均収入は社会平均収入との格差が最も大きく、既に128倍にも達しています。

 また、産業構造の調整と経済分配の影響によって中国の都市と農村の間、東部・中部と西部の収入間にもバランスが取れていない問題が存在し、農村人口の沿岸部への移動により“農民労働者”と“城鎮住民”の収入水準の差も甚だしい格差を生んでいます。中国政府は社会の公正性を維持するために、収入分配に関する体制改革を加速させており、収入分配の不公平な現象を改善するため「2つの移転」、すなわち「所得移転」と「支出移転」について改革の手綱を引き締めています。

 「所得移転」に関しては、社会福祉の建設を速め、社会保障の範囲と基盤の強化を拡大させ、医療、養老、教育、住宅などの国民生活の補助を多く設け、国の財政収入をより多く国民所得に転化させ、現在の所得成長と経済成長の不均衡な状態を改善させようとしています。

 また、「支出移転」においては、国が関わる税徴収、水、電気、ガス、公共交通など、国民の生活面での支出コントロールを目指しており、政府は財政から直接補助する形で国民生活の困難を解決すると同時に、公共部門のコスト上昇の問題を緩和させようとしています。

 ただ、国有企業等で採用されている旧態依然とした賃金の管理方法に対する改革や労働報酬の増加が所得分配問題を解決することが非常に難しく、政府は経済発展の状況に応じて、厳格に最低賃金制度を実行すると同時に、適宜、物価水準にふさわしい最低賃金の引き上げを打ち出し、GDPにおける労働報酬の比重を逐次高めていく政策を目指しているようです。


清原 学

清原 学
http://ameblo.jp/preseed/

プレシード 上海基望斯企業管理諮詢有限公司 CEO
中国の人事労務事情、中国労働関連法の第一人者。学習院大学、東京工業大学大学院研究科修士課程。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード設立。中国進出日系企業の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリーに携わる。企業の代理人として中国労働組合との交渉、労働仲裁・和解の法廷にも立つ。独立行政法人中小企業基盤整備機構国際化支援アドバイザー、ジェトロ上海センター人事労務相談契約、兵庫県中国ビジネスアドバイザー、神戸学院大学東アジア産業経済センターアドバイザー、京都外国語大学非常勤講師等を務める。上海在住12年。ユーモアを交え、中国の労働法制度からその社会的背景まで鋭く切り込む語り口は、多くの聴衆を惹きつける。中国と日本を往復し、各地自治体、商工会議所、経営者団体等での講演多数。

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