中国の特殊労働時間制について


 ●中国は「労働法」(1995年1月1日施行)及び「従業員の労働時間に関する規定」(1995年5月1日施行)に基づき、1995年5月1日から労働者の労働時間を1日8時間、週40時間とする標準労働時間制を実施している。

通常は、週5日労働制が採用されているが、1日当たりの労働時間を減少すれば、週6日労働とすることも可能である。標準労働時間制の下では、時間外労働は、1日3時間を超えてはならず、1ヶ月36時間を超えてはならない。時間外労働の場合、関係規定に従い割増賃金(残業手当)を支払う必要がある。他方、業務の性質により、標準労働時間制を実施することができない場合、使用者は、労働部門の認可を経て、不定時労働時間制及び総合計算労働時間制という特殊労働時間制を実施することができる。

●特殊労働時間制は不定時労働時間制と総合計算労働時間制に分けられる。

「不定時労働時間制」とは、日本の裁量労働制と類似の制度で、1日の労働時間(特に出勤・退勤時間)を固定しない労働時間制である。「企業の不定時労働時間制及び総合計算労働時間制の実施に関する審査認可弁法」(1995年1月1日施行)によると、企業は以下の従業員について不定時労働時間制を実施することができる。

(1) 企業の高級管理職員(通常は、総経理、副総経理、財務責任者を意味するが、各部署の責任者を含むことができる)、外勤人員、販売人員、一部の当直人員及び業務により標準労働時間に基づく評価のできないその他の従業員

 (2) 企業の長距離運送人員及びタクシー運転手、鉄道、港湾及び倉庫の一部の荷役人員及び業務の性質が特殊であることにより機動的に業務を行う必要がある従業員

 (3) 生産特性、業務の特殊要求又は責務範囲の関係により、不定時労働時間制の実施に適するその他の従業員

●不定時労働時間制の場合、1日8時間以上、週40時間以上勤務しても、時間外労働とされず、原則として残業手当を支給する必要がない。

但し、一部の地方(例えば、上海市、深圳市)では、法定休日に出勤させた場合は当該従業員の時給の300%を下回らない割増賃金を支払わなければならない。なお、企業としては、不定時労働時間制を採用することによって人件費の削減が期待できるが、1日の労働時間を固定しないため、社内規則において関係管理ルールきちんと整備しないと、従業員の管理上の問題(例えば、遅刻、早退、無断欠勤)が生じる恐れがある。

● 「総合計算労働時間制」とは、日本の変形労働制と類似する制度で、週、月、四半期又は年等を周期として労働時間を総合的に計算する労働時間制である。業務の性質上、一時期に集中的に労働する必要がある業種、季節性及び自然条件の規制がある業種に適用される。「企業の不定時労働時間制及び総合計算労働時間制の実施に関する審査認可弁法」によると、企業は以下の従業員について総合計算労働時間制を実施することができる。

(1) 交通、鉄道、郵便・電話、水運、航空、漁業等の業種のうち、業務上の特殊性により継続的作業を必要とする従業員

(2) 地質及び資源調査、建築、製塩製糖、観光等の季節や自然条件の制限を受ける業種の一部の従業員

(3) 総合計算労働時間制の実施に適したその他の従業員

総合計算労働時間制の場合、計算周期内のある特定の1日又は週の労働時間が8時間又は40時間を超えてもよいこととなっている。しかし、計算周期内の総労働時間数は、1年に2000時間、1四半期に500時間、1ヶ月に166.64時間までに制限されており、これを超過した場合、超過部分は時間外労働とみなされ、残業手当を支払う必要がある。時間外労働の時間は、月平均36時間を超えてはならない。また、強度の肉体労働に従事する従業員の場合は、1日の連続勤務時間は11時間を超えてならず、かつ少なくとも毎週1日の休日を与えなければならない。

●なお、特殊労働時間制を採用する場合、労働主管部門の認可が必要である。さらに、企業は、特殊労働時間制の実施及び勤務形態につき、労働組合及び労働者と協議しなければならない。


翁 道逵

翁 道逵
http://www.vbest.jp/

(Weng, Daokui)
弁護士法人ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
2001年 中国華東政法大学法学部卒
2006年 中国律師資格取得
2007年 日本国東京大学公共政策大学院修士課程卒業
2006年3月~2014年7月 日系、外資系の法律事務所の外国弁護士
2014年6月 上海正策律師事務所パートナー
2014年8月 弁護士法人ベリーベスト法律事務所パートナーとして入所
2014年10月 日中投資促進機構理事就任

中国律師資格取得後の10年間は、日系企業の訴訟案件、中国進出、中国事業の統合、撤退・清算、労務関係、競争法関係等を中心に様々な案件に取り組んで参りました。

今後は、これまでの経験を基礎として、中国企業の日本への投資案件にも対応できるよう努めて参りたいと考えております。皆様にご満足いただけるよう日々研鑽に努めて参ります。


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