- 中国新幹線(高速鉄道)の特許問題で案外知られていないこと。
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- by鈴木 康介
- on 2011/7/21
最近、中国企業が、日本企業の新幹線の技術を特許申請(特許出願)したというニュースがありました。日本の技術が盗まれた!と騒ぐ人もいらっしゃるようです。日本の技術が盗まれたかどうかをどうやってわかるのかが知りたいです。。。
<背景>
第1に、特許出願された内容は、一定期間公開されません。このため、出願人が明かさない限り、その内容は基本的に第三者にはわかりません。今回中国企業が新幹線(高速鉄道)関連の技術を特許出願したとしていますが、中国企業側から、情報を得て、日本企業が供給した技術と比較しないと盗まれた技術か否かわかりません。
我々専門家がコメントしようにも、対象となる特許出願がわからないので、技術的な部分についてはコメントができません。
第2に、特許出願が全て特許権になるわけではありません。特許出願は、各国毎に審査されます。そして、その国の要件(特許権を得るための条件)を満たすと特許権が付与されます。主要国では、要件の一つとして、新しい発明にしか特許権を付与しないという新規性という要件があります。
今回中国企業によって特許出願された技術が、例えば、日本企業の当該技術が特許公報などで既に公開されていた場合には、新規性の要件を満たせないとして、特許権が付与されない可能性が高いです。
また、新規性の要件を満たしたとしても、主要国では進歩性という要件があります。この進歩性という要件は、今まで知られている技術よりすごいことが求められます。もしも、公開されている日本企業の技術とほとんど変わらない技術であれば、進歩性の要件を満たさないとして、特許権が付与されない可能性が高いです。
一方、進歩性の要件が満たされるようなものであれば、中国側が独自開発した技術として考えてもよいのではないかと思います。
第3に、新幹線関連の特許は、一つではありません。某日本企業の鉄道関連の特許権は、国内だけでも数百件あります。例えば、新幹線は、先端や車体の構造や、カーブを曲がるときの傾斜制御システムや、電源システム等多種多様な技術が特許権で保護されています。
仮に、中国企業が独自技術を開発して、特許権を取得したとしても、その特許権の範囲を避ければよいですし、また、中国企業が米国で新幹線(高速鉄道)を売ったとしても、その新幹線に、日本企業の特許発明が使われていたら、日本企業側は、ライセンスフィーや差し止めができる可能性があります。
※日本国内法では、出願から1年6ヶ月で出願内容が公開されます。
※日本の特許権は、日本国内でしか効力がありませんし、中国の特許権は、中国国内でしか効力がありません。
※南アフリカなど一部の国では無審査で登録されますが、日本、アメリカ、中国などでは国毎に審査して、特許権を付与しています。
※日本国内法では、新規性(特許法29条1項)、進歩性(同29条2項)で規定されています。
※対象国に特許権を持っている必要があります。
2012年 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 ・ 2月 知財羅針盤(発明2月号) 発明協会 2011年 ・12月 知財羅針盤(発明12月号) 発明協会 ・10月 知財羅針盤(発明10月号) 発明協会 ・ 8月 知財羅針盤(発明8月号) 発明協会 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 ・ 2月 知財羅針盤(発明2月号) 発明協会 2010年 ・12月 知財羅針盤(発明12月号) 発明協会 ・ 8月 知財羅針盤(発明8月号) 発明協会 ・ 6月 知財羅針盤(発明6月号) 発明協会 ・ 5月 競争優位性又は企業価値と知財 会計・監査ジャーナル5月号 第一法規出版 ・ 4月 知財羅針盤(発明4月号) 発明協会 2009年 ・10月 中国における商標実務(発明10月号)発明協会 2006年 ・9月 ソフトウェアエンジニアリング論文集80's~デマルコ・セレクション 翔泳社
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