お菓子の詰め合わせは本当にダメ?(ケーススタディ「贈る物選びには要注意-その3-」)


ケーススタディ「贈り物選びには要注意」

「贈る物選びには注意」というテーマです。お土産として相応しくない品物です。前回は「時計は絶対に贈ってはいけない」という点を述べました。今回の解説は「お菓子の詰め合わせ」です。

① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘  【×】
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計  【×】
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子  【×】
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計  【×】
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子

◆「つまらないものですが・・・」

 贈り物として「お菓子の詰め合わせ」は絶対に贈ってはいけない品物なのでしょうか?「私は毎回手土産にお菓子を買って行く」、「チョコレートや人形焼はけっこう人気がある」(特に『白い恋人達』)という方もいらっしゃるのではないでしゅか? そうです。実は「お菓子の詰め合わせ」を贈ってはいけないのではなく、お土産を渡すときの「渡し方」の問題です。日本人同士ならよく使う言葉ですが、「つまらないものですが、どうぞみなさんで召し上げってください」という言い方をします。実は品物が悪いのではなく、渡すときにどんな言葉を添えるかが問題です。

 最初のポイントは「つまらないものですが・・・」という言葉です。日本人なら誰でも理解できることですが、「つまらないものですが」という言葉は、自分を謙らせて相手に対する尊敬の気持ちを表すときの言葉です。本当に「つまらないもの」と思っているのではなく、謙遜の気持ちを表現した言葉です。日本人特有の謙虚さや謙譲の美徳がその背景にあります。日本人なら誰でもあたりまえによく使う言葉ではないでしょうか?

しかし、中国人に対しては必要以上に謙った表現は不要です。「つまらないもの・・・」ではなく、むしろ「陳さんのために一番いいものを買ってきました。」と言って手渡すほうが正解です。中国人に「贈り物」をするときには、「あなたのために一番いいものを選んできました。」、「いっしょう一所懸命選んでわざわざ買って来ました。」、「これは一番おいしいお菓子の詰め合わせです。」と言ったほうがむしろ喜ばれるでしょう。

「贈り物は人間関係のバロメーター」というキーワードがあります。実は「つまらいもの」は贈ってはいけないのです。贈り物はふたりの関係を象徴するいい物(りっぱなもの、価値のあるもの、それなりに金額の高いもの)を贈るべきです。本来、「つまらないもの」は贈るべきではありません。「私とあなたの関係はこの程度・・・」と思わせてしまう可能性があります。この点は中国と日本との文化の違いです。

もちろん「お菓子の詰め合わせ」が悪いのではなく、心を込めて贈れば「お菓子の詰め合わせ」でも大丈夫ですが、「陳さんのためにとってもおいしいお菓子を選んできました」というぐらいの言い方はしたいですね。次に中国人にお土産を渡す機会があったら、ぜひ実践してみてください。受け取る側は今まで以上にあなたのお土産に感激するはずです。

 ◆「みなさんで召し上がってください・・・」

もうひとつポイントがあります。お土産を手渡すときに、「みなさんで召し上がってください」という言い方です。実は、これは渡す相手に対して失礼な言葉です。「贈り物」とは基本的に個人が個人にプレゼントするものです。一対一が基本です。「皆さんで召し上がってください」という心遣いはわかりますが、「どうぞ陳さん受け取ってください」と言って渡すべきです。「ありがとうございます。せっかくですから、みんなでいただきましょう」と言って受け取り、みんなで食べるかどうかを判断するのは陳さんです。最初から「みなさんでめしあがってください」ということは、陳さんの面子をつぶすことにもなりかねないので注意が必要です。

ここで「実践テク」ですが、お土産を渡すときは陳さん用にひとつと、みなさんで召し上がっていただくためにもうひとつと、2つ準備するといいと思います。「これは陳さんどうぞ召し上がってください。それからもうひとつはみなさんで召し上がってください」と言ってふたつ渡します。陳さんの面子を潰さずに済みますし、私のお土産を陳さん自身が社員に配ることで別の面子を立てることにも通じます。

しかし、実はこれでも不十分(?)と考える中国人もいるようです。私の友人は「ヨシムラさん、本当にみなさんで召し上がってほしかったら、陳さんの部下ひとりひとりにひとつずつ準備するべき

ですね」とコメント。なるほど! それが正しい心遣い(?)かも知れません。

確かに、中国から来るお客さんから受け取るお土産はそうですね。日本で開催されるイベントで(投資説明会や展示会など)、中国の企業や地方政府の方々のサポートをすることがよくあります。その時に彼らが持ってくるお土産はひとりひとつが原則です。そういえば「みなさんで召し上げってください」というお土産を受け取ったことがありません。こんなところに中国人の気遣いを改めて発見します。

次回は「緑の帽子」の解説・・・

To be continued


吉村 章

吉村 章
http://www.ippc.biz/default.aspx

ASIA-NET 代表
Taipei Computer Association(TCA) 東京事務所 駐日代表
NPO法人アジアITビジネス研究会 理事
独立行政法人中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー

◆アジアに進出する日本企業を支援するため現地視察やビジネスマッチング、技術アライアンスのサポートなどが主たる業務。1987年~1996年の台北駐在後、2001年からは本格的に中国に進出する日本企業の支援に取り組む。◆中国・台湾をはじめ現場でのヒアリングは延べ400社。徹底的に現場を回ることにこだわり、具体的な中国進出の事例やアライアンス事例から中小企業にとっての中国ビジネスの課題を考える。◆2003年からは自身の海外進出の経験やノウハウを体系化した『アジアビジネススキルアップ研修』を実施。異文化理解を基本としたDo‘s&Dont’sプログラム(海外進出の際の禁止事項、禁止フレーズ、注意フレーズなど)や参加体験型の研修内容には定評がある。http://www.asia-net.biz/20-0.pdf ◆2012年からは現地視察の注意点、展示会出展のノウハウ、自己紹介のテクニックや通訳を使いこなすテクニックなどをプログラムに取り入れた『海外市場開拓セミナー<実践講座>』を提供。各地の商工会議所や地方銀行などで採用されている。http://www.asia-net.biz/20-0.pdf ◆著書に「中国人とうまくつきあう実践テクニック」、「中国人との実践交渉術」(総合法令出版)、「知識ゼロからの中国ビジネス入門」幻冬舎、他。

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