- 中外合弁企業における少数持分権者の拒否権
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中外合弁事業の少数持分権者にとって、合弁企業の一定の事項につき拒否権を持つことが重要である。本稿では、中外合弁企業における少数持分権者はどのよう事項について、拒否権を持つことができるかについて紹介する。
1.中外合弁企業の最高意思決定機関
中外合弁企業の機関設計に関しては、「中外合弁企業法」及び「中外合弁企業法実施条例」が適用され、董事会が最高意思決定機関となり、会社に関する一切の重要事項を決定する。董事会は3人以上の董事から構成され、出資者が董事を任命する出資者がそれぞれ任命できる董事の人数は、通常出資者の出資比率に応じて分配し、定款に定めるものとされている。
ただ、機関設計に関しては、「会社法」が適用される特殊な中外合弁企業もある。例えば、中外合弁の証券投資基金管理会社、保険会社などである。この場合、会社の最高意思決定機関は董事会ではなく、株主(出資者)会になる。
2.董事会が最高意思決定機関である場合
「中外合弁企業法実施条例」第33条1項によると、①定款の修正、②中途終了及び解散、③登録資本の増減、④合併及び分割は、出席董事の全員一致の賛成により決議しなければならない。したがって、少数持分権者は、その任命した董事を董事会に出席させ反対させることにより、これらの事項に関して拒否することができる。すなわち、少数持分権者は1人でも董事を任命すれば、少なくとも上記4項目の事項につき拒否権を確保することができる。この「出席董事の全員一致の賛成」という決議要件は軽減することはできないが、合弁会社の定款で「在籍董事の全員一致の賛成」というふうに加重することが可能である。
また、上記4項目以外の事項につき、合意があれば「出席董事の全員一致の賛成」、又は「在籍董事の全員一致の賛成」を要する決議事項として定款に定めることができる。これにより、少数持分権者はその拒否権行使の対象範囲を拡大することができる。例えば、子会社、分支機構の設立、一定金額以上の契約の締結、利益の配当などの事項が考えられる。
3.株主会が最高意思決定機関である場合
上述したとおり、一部業種の中外合弁企業の場合は、「会社法」の規定に従い株主会が設置されることがある。この場合、会社の最高意思決定機関は株主会になる。「会社法」第44条によると、①定款の修正、②登録資本の増減、③合併及び分割、④解散、⑤会社形態の変更については、3分の2以上の議決権を有する出資者の賛成により決議しなければならない。したがって、少数持分権者は3分の1以上の議決権を取得すれば、少なくとも上記5項目の事項につき拒否権を有することになる。この3分の2以上の決議要件を軽減することはできないが、例えば、「4分の3以上による賛成」などと加重することができる。また、上記5項目以外の事項につき、合意があれば決議要件を加重し、少数持分権者の拒否権を確保することもできる。
4.無効決議の取消しと拒否権行使の確保手段
株主会又は董事会の招集手続に瑕疵があり、それにより少数持分権者の拒否権の行使が阻止される場合がある。例えば、株主会、董事会会議の開催について、少数持分権者が任命した董事又は少数持分権者に故意に通知しなかった場合、少数持分権者が任命した董事は会議に出席せず、決議事項に反対しても拒否権を行使できなくなる。このような株主会、董事会の会議招集手続は法律又は会社定款の定めに違反するため、「会社法」第22条に基づき、株主は決議がなされた日から60日以内に裁判所に取消しを請求することができる。したがって、少数持分権者の拒否権行使の機会を確保する観点から、株主会、董事会会議の招集手続を具体的に定款に定める必要がある。
なお、「中外合弁企業法実施条例」第32条2項は、董事会会議が3分の2以上の董事が出席しなければならないと規定している。したがって、少数持分権者が3分の1以上の董事の任命権を取得すれば、その任命した董事が董事会に出席せずに董事会を有効に開催させないことができる。ご質問の場合、董事会は5名の董事を設置することを前提にして、合弁相手企業と貴社の出資比率に応じて、合弁相手企業が4人、貴社が1人の董事を任命するパターンと合弁相手企業が3人、貴社が2人を任命するパターンが考えられるが、後者の場合、貴社の任命した董事が会議に出席しなければ、董事会は有効に開催されないことになり、貴社の関与なくしては董事会は決議できない結果になる。したがって、董事会開催の定足数を考慮しながら、董事会の決議事項及び拒否権の定め方を検討したほうがよいと考える。
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