中国華南日本人経営者列伝 1

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日本の会社を早期退職し、中国に来た私は、日本にいたころとは比べ物にならないくらい多くの日本人経営者と接する機会を得た。
周りが99。9%日本人だった環境よりも、中国華南に来て多くの日本人経営者と知り合いになった。
サラリーマンとして狭い社会で過ごしていたのが、独立して境界のない世界に飛び出してしまったためだろう。

そんな中国で知り合った尊敬すべき日本人経営者をご紹介したい。

伝説の再建屋・原田則夫

まず最初に紹介すべき経営者は、原田則夫氏だ。
最初に原田氏に出会ったのは、2004年11月、明治大学の市民講座だった。中国で事業を立ち上げたそうそうたる方々の講演を聞かせていただいた。
その中で異彩を放っていたのが原田氏だった。

当時中国で生産委託先4社を指導していた私には、それなりに中国における「常識」があった。
 仕事を通して得た知識は同僚、部下には教えない。
 職務範囲を明確にし、他人の仕事には口を出さない。
 せっかく育てた人材は、簡単に出て行ってしまう。
そんなネガティブな印象を持っており、リーダは育てられたが、会社が育てられなかったと苦悶していた。
原田氏は、そんな私の「常識」とことごとく反対の話をされた。

そんなにうまくゆくはずがない。正直に言うと原田氏の話を聞いてそう思っていた。

彼は、人生の半分以上31年間を海外勤務で過ごした。そのまた半分の16年間を中国で過ごした。SONY恵州の社長時代には、日経ビジネスに紹介されるほどの経営手腕を発揮していた。

そして最後の8年間は、深センにあるSOLID社の経営をされていた。
2001年当時、アイワ、SONYの生産委託先だったSOLID社は倒産の危機にさらされていた。SONYから再建を託され、単身SOLID社に乗り込んだ原田氏はわずか2年の間に、企業再生を成し遂げている。

その2年間の間に原田氏がしたことは、従業員を育て、従業員が育つ仕組みを社内に確立しただけだ。
これにより従業員が「成長意欲」を求心力とする、すばらしい企業文化が出来上がった。

初めて原田氏を訪ねてSOLID社を訪問した時(2005年1月)に、原田氏が講演で話をしたことは、微塵も誇張がないことを感動を持って思い知った。

当時、受付で仕事をしていたのは、作業者から登用された女性だ。
原田氏によると、昨日まで600の作業員だった人だ。

その彼女は、受付業務の合間に来客や会議のために、飲み物を提供する喫茶部の仕事を任されていた。その喫茶部には営業成績を示すグラフが貼り出してあった。
昨日まで作業員だった女性が、パワーポイントでグラフを作っているに驚きいた。そのグラフを近くで見て、さらに驚いた。グラフには売り上げの他に、経費が固定経費と変動経費に分けて表示してあったのだ。20代になったばかりと思われる農村出身の作業員が、損益分岐点を理解しているのだ。

原田氏に、良くここまで教えましたね。と尋ねたら、何事でもないという顔で「ここまで教えておけば、この子は田舎に帰って食堂の経営くらいは出来るだろう」とおっしゃった。

つまり原田氏は、従業員が会社を辞めた後の人生も幸せであることを願って指導をしていたのだ。あまりの感動に危うく落涙するところだった。

その後も何度かSOLID社を訪問したが、訪問のたびに新たな気付きを頂いた。
私にとっては、工場経営の師匠と言っても良い存在だった。

その原田氏は2009年末で引退し、日本に帰る予定だった。引退後は、昼間はパチンコをし、夜は海外で仕事をした経験を本に書くことを夢見ていた。
しかし残念なことに、その夢はいまだにかなっていない。2009年12月12日に帰国直前、中国で急逝してしまったのだ。

師匠を失った悲しみにくれていたが、「原田式経営哲学」を多くの人に伝えることが、原田氏に対する恩返しだと気がついた。今年の3月から定例で「原田式経営哲学勉強会」を開催している。この勉強会には、原田氏の元部下たちが参加し盛り上げてくれている。
その原田氏の弟子たちは、12月12日の命日に原田式経営哲学の交流会を企画しているようだ。どのような形で開催されるのかはまだ分からないが、私も万難を排して参加するつもりだ。

林 徹彦

林 徹彦
http://www.quality-mind.com/

クオリティマインド・代表

品質改善・経営革新コンサルタント
1952年名古屋生まれ
金沢大学大学院電子工学専攻卒
24年間横河電機に勤務の後独立
現在中国華南地区にて現場型コンサルとして活動

中国,台湾,マレーシア,インドネシア,メキシコの製造現場で指導歴多数.

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